ショーロク!! 6月後半ー5
5.エロエロボックス豪華4点セット
銭湯を出たオレたちは、時間も時間だったので各々帰宅することにした。
オレとサトチンは10時頃まではどちらかの家にいるという設定で遊びまわることができたので、二人で近所にある駄菓子屋の前に自転車をとめて、今日の反省会を開いていた。
もちろん、駄菓子屋はもう閉まっているので、声はやや控えめにしている。それでもお互いの興奮は十分伝わった。
「で、シコシコってどんなんやねん」
風呂で中断されたオレの興味はその一点だった。
「いや、オレもよう分からんねん。何か刺されたみたいな感じやったわ」
「それやったら痛いやんけ!!」
「いや、それが早く次がやりたいねん・・・何でやろ」
「不思議な話やで、これは・・・」
とオレはサトチンの奇妙な感想に首をひねった。
もともと何の遠慮もなく本音で話し合えるオレたちである。お互いのチンポを握り合う勢いで今日の出来事を振り返りつつ、話題は、どうすればモリのように恍惚の域に達することができるかということになっていった。
「たぶん、オレたちはまだエロの知識のストックが少ないねん」
サトチンが核心をつくようなことを言った。
オレも銭湯でなかなか勃起しなかったことから、自分の経験不足を感じてはいた。
「そやな、モリのエロ本はすごかったけど、オレらがもらったんは、まだ可愛い感じのヤツやもんな」
「ホンマに大人が見るようなエロ本見たら、メッチャ気持ち良くできるんちゃうか?」
根拠のない思いつきの発言だったが、オレはサトチンが天才科学者のように見えた。よくそこに着眼してくれた!
その夢(ロマン)を具現化させることこそがオレの役目だ。
「よし!それや!今からもっとすごいエロ本買いに行くぞ!」
今度はサトチンが驚いてオレを見つめた。どうやって?という顔をしている。
確かに、時刻はもう夜の9時過ぎで、本屋はおろか、近所の商店街の店は全て閉まっている時間だ。コンビニなど珍しい時代と地域、今から買い物をするなど無理な話である。
・・・オレは、それを逆に利用してやろうとしたのだ。
「自動販売機・・・」オレはニヤリとしてサトチンに言った。
サトチンの表情が驚きから歓喜へと変わる。
「そうや!!あれやったら、かなりキツいのが手に入るうえに、こっそり買えるやん!」
オレは得意満面、サトチンとオレの財布からお金を書き集め出した。
自動販売機というのは、小学校の裏のタバコ屋に置かれているエロ専門のうす緑色の自販機のことで、昼間は子供たちに見えないように銀紙みたいなものが貼られているが、暗くなると、どういう仕組かは分からないがそれが消えてしまい、何が売られているか見えるようになるのだ。
オレたちは冬にはわざとその自販機の前を通り、決して手に入れることができない完全大人仕様のエロ本に夢を膨らませていたのだった。
「おお!さすが風呂帰りやな。二人で2100円もあるで」
「う~ん・・・」
お釣りをおばちゃんに渡さないといけないサトチンはかなりしぶったが、自分自身の欲望には勝てず、結局自販機へ行くことに決めたのだった。
エロ専門自動販売機は、コカコーラの自販機の横に立っていた。
サイズ的には縦に長く、照明はどことなく薄暗い。
「じゃんけんで負けた方が見てくることな」
夜とはいえ、学校のすぐ近くである。どこで誰に見られているとも限らない。
オレたちはドキドキしながら、コーラの自販機でジュースを買うのを装い、どのエロ本を買うか決めることにした。要するに偵察して、意見をまとめて、購入する。という手順を踏むことにしたのだ。
じゃんけんの結果、サトチンがまず偵察に向かった。
自転車でコーラの自販機の前まで走って行き立ち止まり、首だけ伸ばして必死にエロ自販機の方を確認する。
オレは曲がり角からその姿を見ていた。万一大人が出てきて怒鳴られたときにはサトチンを置いて逃げる気満々だった。
サトチンはたった10秒程度でオレの待つ曲がり角に戻ってきた。
「お前、早すぎるやろ」
オレは不満げに言った。どうやら風の音でビビったらしい。全く情けない。
「だいたいどの本も1000円前後やわ、でも1個だけ2000円のヤツがあってん」
サトチンは胸を押さえながら言った。
「2000円はオレらのほぼ全財産やな」
「もう一回ちゃんと見てから決めよ。お前行って来いや」
サトチンがオレの自転車を押した。
何となくそのままの勢いでオレは自転車をこぎ出し、さっきサトチンがそうしたように、コーラの自販機の前で不自然に体を伸ばして、エロ自販機をチェックする。
おばはんがセーラー服を着て草むらでしゃがんでいる表紙が3冊ほど、ビデオが2つ、普通の雑誌のようなのが3冊。そして、一番下にサトチンの言っていた高額の品があった。
それは教科書大程度の白い箱で表面にマジックで「エロエロボックス」と書いてあり、その下に「ごうか4点セット」と小さく書いてあった。
豪華が平仮名になっているのがかなり胡散臭かったが、この一つだけが中身を見せないという点で、ひょっとしたら普通では手に入らないものが売られているのではないだろうかという期待を抱かせた。
オレはいったんサトチンのもとにもどることにした。
「お前も十分早いやんけ」
と、サトチンは笑ったが、オレはそんなことより・・・と話を切り出した。
オレは真顔でサトチンを見ながら言った。
「せーのでよかったと思うのを言い合おう」
「うん」
「せーの」
「エロエロボックス!」
「ごうか4点セット!」
・・・
お互いの着眼点は違ったが、購入したいと思った品物は一致した。
あとは誰がどうやって、この白い箱を買って、家まで持って帰るかである。
またまたオレたちはじゃんけんをして、今度もオレが勝ったので、サトチンが買いに行くことになった。
エロ自販機の前までゆっくりと進んだサトチンは、二人でかき集めた2000円分の小銭をコインの挿入口に入れ始めた。
結構離れた曲がり角でも、ガチャン、ウィーンといった音が聞こえてくる。
そのたびにあたりを見回すサトチンが滑稽だった。
ようやく、コインをすべて入れ終えたサトチンは2回ほど指差し確認をして、お目当てのエロエロボックスのボタンを押した。
その瞬間、ガタン!!グイーン!!ドガシャーン!!
と、予想だにしない轟音が響き渡った。
サトチンはその音に驚き、自転車から転げ落ちてしまい、そのまま自転車を置き去りにして、猛ダッシュでオレのもとへ戻ってきた。エロエロボックスはまだ自販機の中だ。
「アカン、オレもう限界や」
ゼエゼエと言っているサトチンを見て、爆笑しかけたが、こんなことをしている間にせっかく買ったエロエロボックスが誰かに取られてしまってはどうしようもない。
冷静に考えると、人影もないし、あり得ないのだが、そのときは本気で心配になってしまったのだ。我ながらアホすぎる。
オレは自分の自転車を降りて、サトチンの自転車を取りに行く感じで、ゆっくり自販機に近づいて、自転車を起こしながら、そっとエロ自販機の取り出し口に手を入れて白い箱を取り出した。
思ったより重量感があり、期待は否応なしに高まった。
一目散にサトチンに向かって走り出すと、サトチンはオレの自転車にまたがって、逃げるように走り去った。
その時に「中尾中小学校6年の横山!!エロ本買うなや!!」と叫んで走り去りやがった。
「お前、せこいぞ!!」オレはあわててサトチンを追いかけつつ「中尾中小学校6年2組のサトウ!!エロ本2冊買うなや!!」と、1冊割り増しで叫ぶことも忘れなかった。
・・・何だこの不毛な言い合い。
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