初めての就職活動で大企業に応募したのに色々とおかしなことばかりだった時の噺
2月がすぐそこまで来ました。
この季節になるといつも思い出すのが、就職活動のことです。
今が2024年ですから、新卒の時の就職活動がもう22年前になるんですよね。「2003新卒」と呼ばれていて、リクナビでアカウント作って、なんだか未来を生きているような実感があったんですよ当時ね。
で。
私は学歴でアドバンテージを得られるようなところに所属していた訳ではなかったことと、就職氷河期の最後の方だったこともあって、かなり大変だったんですよね。今思うと。
しかもね。
新卒の頃の、何も経歴が無いところから始めることになるので、自分が何がやりたくて、どういう企業にエントリーするか?っていうところをゼロから始めなければいけない。
これ、自由度は高いけど難易度も高くて。
新卒を経ているのであれば経験も付く。
スキルも付く。
でも、そういうものが無い状況で、中途半端な学歴とスキルの無い自分をどうアピールするか?って言ったら困るんですよね。
ですから、とにかく手広く受けました。
教育産業。
商社。
不動産。
他も色々受けましたね。
もう何受けたかよく覚えていない程ですよ。埼玉の北の方にダイキャストって部品を作っているメーカーがあって、最終選考まで残って、結果はよく覚えていないけどこんなところまで来なきゃいけないのかと思ったこともありました。
そんな中でね。
ふと思い立って、大企業も受けてみようと思いまして。
エントリーしてみたんですよ。
サントリーに。
こんな会社も公募しているんだーって感じでした。
そしたらね。
学歴フィルターとかあるのかな?って思ったんですよ。まぁ当時からそういうことはまことしやかに囁かれていましたからね。
それが、なんか説明会のお誘いの通知が来たんですね。
へー
私みたいな者にも丁寧な会社だなぁ。
って思ったんですけど、説明会の場所が水天宮だっていうんですね。
水天宮?
安産祈願する場所くらいにしかイメージ無いですよね。
ちょっと変だなと思ったことは事実なんですけど、それでもお誘いいただいたし、チャンスかもしれない。
そもそもサントリーなんて受けたのは、度胸試しと場慣れ的な意味合いも強かったので、ある意味で後押しにもなったんですよ。
そして当日。
基本的に生息しているエリアが神奈川に偏っていた私は、ほぼ未開の地といっても良かった水天宮に向かいました。
住所も調べてプリントアウトして、それを頼りにきょろきょろする。
田舎者丸出しですよね。
で、見つけたんですよ。
説明会のビル。
でもね。
さすがにビックリしたんですけど、すんごい薄汚れているんですよ。
サントリーが説明会が行うにはどうかと思うようなたたずまい。っていうかね、雑居ビルとしか言いようがない感じ。
正直な印象として
ここかよ
っていう4文字しかなかったわけです。
サントリーってこんな感じなんだ…
ここに来るまではちょっと高揚感はあったんですけど、一気にスーッと引いていく自分が居たんですよね。
ただ。
ふと私は21歳の乏しい知識をフル稼働させて一つのエピソードを思い出しました。
それは、当時愛読書だった「美味しんぼ」の「ケチ平」のエピソードです。
東西新聞勤務で「究極のメニュー」作りにいそしむ山岡は、その日部長か誰かの指令でアフリカの飢餓に対する支援を募るためにとある会社を訪れることになります。
その会社を切り盛りしているのが「ケチ平」でして、ケチな彼は正に水天宮の雑居ビルのような佇まいのビルに居て、しかも清掃費を払うのも嫌だという理由(だったと思う)から作業着姿でモップ掛けをしている訳です。
山岡は支援をお願いするのですが、ケチ平は美味いものを食わせろと言います。ケチ平の流儀を目の当たりにした山岡は、銀座界隈の料亭の残飯を貰うことで生きてきた浮浪者の辰さんから知恵を拝借し、デパートの地下で試食コーナーをハシゴすることによってケチ平を満足させることに成功。
ケチ平は1億円ポーンと寄付し、山岡は「本当の金持ちは金の使い方を分かっているんだ」と満足げに語るところで終了。
という話でした。
あ。
これは。
サントリーもまたケチ平なのかもしれない。
だとすると私はとんでもない思い違いをしていることになる。
そう思った私は自らを恥じました。
そんな本質的な部分を建物の外観から見誤るなんて、これから社会に出ていく人間として失格ではないか?そんな風に思ったのです。
そして私は気分も新たに水天宮の雑居ビルに入りました。さぁ、サントリーの説明会とはどんなものなのだろうか?
雑居ビルという空間、そしてケチ平のエピソードをごちゃごちゃにして期待と不安、そしてなんだかよく分からない感情が闇鍋のようにグツグツと煮込まれているという状況です。
すると、少し気になることがありました。
参加者が妙に、ガタイがいいのです。
そもそもここは雑居ビルなので薄暗く、天井が低く、かなり狭く感じる作りになっているのは確かだったのですが、参加者がデカいので更に小さく感じたんですよ。
なんだここは
こんなに体育会系ばかりが目指すのだろうか
サントリーという会社は
雑居ビルに関してはケチ平的な意味合いで分かる。
しかしラガーマンなのか力士なのか柔道一直線なのかよく分からない人たちがこれだけ大挙する会社ってなんなんだ
と思ったのも事実です。
さすがにこればっかりは当時の私には知恵が無く、体育会系、しかもやけにパンプアップしている同学年の青年がこれだけ多い理由が見当たりませんでした。
どうなるんだろう
私が考えたのはこれに尽きました。
最初にこのビルを目の当たりにしたところに逆戻りです。
そして、参加者にはこれまでの経歴と志望理由などを事前に書くためのシートが配られました。
暇つぶしにこれを書きながら説明会を待ちましたが、ビデオ上映のためにテレビやらなにやらを準備しています。
それ自体は特に疑問に思うものではありませんでした。
ただ、始まってからは「?」しかありませんでした。
まず。
ショーケンこと萩原健一さんが登場しました。
何故サントリーでショーケン?
そしてショーケンさんはガンに効くというアガリクス茸に関する説明を、カメラ目線で話し始めました。
そしてショーケンさんは箱のパッケージをこちらに向けて、笑顔でアピールしたのです。
ショーケンさんパートが終わると、ガンに効くという健康食品の説明が始まりました。中国の奥地で取れるとか、飲んでいる人のインタビューとか、飲んでいる人と飲んでいない人の発がん率の違いとか、そんな話をしています。
ここまでアガリクス茸の効用の話ししかしていません。
私はこう思いました。
サントリーなのにやってることジャパネットたかたかよ
雑居ビル。
志望者に体育会系しか居ない。
そして、アガリクス茸。
どうなってんだ
ケチ平の話しだけじゃ回収できねえぞこの伏線
21歳の頭は大混乱です
とにかくここは分からないことが多すぎる。少なくとも私はサントリーに興味はあってもアガリクス茸に関してはどうでもいいんです。
さぁどうしたものか。
ふと手元にあったショーケンさんが満面の笑みを浮かべながらアガリクス茸をパウダー化した商品のチラシに目をやるとこう書いてありました。
サンドリー
・・・
上映会が終わると休憩時間でしたが、私は帰路につきました。
これから就職活動、転職活動をする皆さま。
会社名はちゃんと確認しましょう。
ちなみに30前くらいの頃、小6の時に一緒に学級委員をやった同級生と再開する機会がありましたが、サントリーに就職していました。
さすがにこのエピソードは話せなかったです