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遺伝や進化も反脆い

今日は『反脆弱性』(著:ナシーム・ニコラス・タレブ)から「進化と予測不能性」を読みました。

著者は「進化」というプロセスもまた、「反脆さがあるからこそ機能する」と述べます。一体どのようなことでしょうか。

実際、進化のいちばん面白い側面は、反脆さがあるからこそ進化は機能するという点だ。進化はストレス、ランダム性、不確実性、無秩序がお好きなのだ。個々の生物は比較的に脆くても、遺伝子プールは衝撃を逆手に取り、適応度を高める。(中略)生殖能力を使い果たした生物は、自然界にとっては用済みとなる(ただし、動物が群れで暮らす特殊な状況は除く。たとえば、人間やゾウの群れでは、子孫が一人前になるを助けるために祖母が必要だ)。ところが、情報のレベル、つまり遺伝情報のレベルでは、ゲームは続く。したがって、自然が反脆さを保つためには、生物は死ななければならない。自然は日和見的で、残酷で、利己的なのだ。

ストレス、ランダム性、不確実性、無秩序。これらが生物・非生物の進化を促すというわけです。以前読んだ「植物と適応」という話を思い返すと、たとえば、乾燥した砂漠地帯という高ストレス下でもサボテンは生き延びることができます。その秘訣は「光合成の時間帯をずらす」というものでした。夜に水分を蓄え、昼は光によるエネルギーを受けて合成を行うわけです。

「遺伝情報の反脆さ」についても述べられてますが、ある生物群が(他の種との競争に負けることも含めて)環境に適応できないとしても、生き残った個体の遺伝情報が「適応」に優位であるとして、次代に引き継がれていく。環境に適応しやすい情報(遺伝子)から誕生した個体は、もし環境が変わらなければ最初から適応しやすいため、生存確率を高めることになります。

ブラック・スワン管理の基本とはこうだ。自然(自然に似たシステム)は、不死の有機体内部の多様性ではなく、有機体同士の多様性を好むのだ。

ブラック・スワンとは、著者が提唱した概念で「めったに起こらないが、壊滅的被害をもたらす事象」を指します。

「自然は有機体同士の多様性を好む」とあるように、外の環境との相互作用を通じて、つまりストレスや衝撃に適度にさらされることによって、多少の損失と引き換えに適応力を高めるということ。たえまない変化こそが反脆さの鍵なのだということを再認識しました。

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