
エビデンスに基づいたまちづくり
香川に来てから、観光やまちづくりといった分野について見聞きする機会が増えました。せっかくなので、観光やまちづくりに関するデータ分析手法を色々と勉強しています。
例えば、最近読んだ「まちづくりの統計学」は、入門書として分かりやすい本でした。
この本には、いわゆる分析のHow Toは記載されていないのですが、本の表紙にもあるように、まちづくりのためのデータやその使い方の例が掲載されています。
私のような初心者には、使えるデータの種類も含め、勉強になることが多々ありました。また、マーケティングの考え方が多く紹介されており、観光やまちづくりへのマーケティングの応用の可能性も知ることができました。
本の中でも少し述べられていますが、効果検証の知見は、観光やまちづくりへの貢献度が高いのではないかと思っています。
効果検証とは、何かしらの施策の効果を測定することです。
例えば、観光や地域活性化のプロジェクトが、本当に効果があるのか?といったことを厳密に検証することは、簡単なようで意外と難しいでしょう。
しかし、最近では様々な手法が開発されており、政策の効果を測定することができるようになりました。こうした手法の概要は、以下のシカゴ大学・伊藤先生の資料・本が分かりやすいかと思います。
当然のことながら、研究においても色々と活用が進んでいます。
例えば、2021年に社会科学のトップジャーナルの一つであるManagement Scienceに掲載された論文では、コロナ禍において、政府が配布したデジタルクーポンの効果を測定しています(※1)。
企業のマーケティング施策の効果測定にも応用が可能であるため、マーケティング研究においても近年盛んに使用されている印象です。
難易度的に少し難しい本ではありますが、Rでコードを書きながら学習できる本も出版されているため、学習してみたい方にはオススメです。
因果関係以外では、最近読んだテキスト分析の本に、観光に関する分析事例が紹介されており、非常に面白かったです。
口コミのデータを利用して、観光客が満足している/不満に思っている要因を考えたり、流行の要因などを検証することができます。
最近、企業におけるデータ分析が流行している印象がありますが、今後は観光やまちづくりといった分野においても、よりデータの活用が活性化するかもしれませんね。
せっかくなので、後期の講義では、因果関係の話も少し紹介してみようかなあと思います。
※1: Liu, Q., Shen, Q., Li, Z., & Chen, S. (2021). Stimulating consumption at low budget: evidence from a large-scale policy experiment amid the COVID-19 pandemic. Management Science, 67(12), 7291-7307.