行き場のないどん詰まりの地獄『ヴィレッジ』
想像していたのとちょっと違った映画。
だけど、面白かったし、そしてとても怖い映画でした、色んな意味で。
閉鎖的な村社会での因習、縦社会、皆んな顔見知り、隠し事は出来ない感じ。
(隠し事だらけだけど)
物語の舞台は村をあげて誘致したゴミ処理施設。
誘致当初は反対運動も激しいものがあり、人も死んだ程の事件となったが、すぐに何事もなかったように、建設は進められて村長を責任者に地元の人間を働き手として運営されていた。
ゴミ処理施設誘致の反対派の1人だった片山家の一人息子の優(ユウ)も今はゴミ処理施設で働いている。
他に働き口などない村では出て行くかゴミ処理施設で働くしか選択肢はない。
単なる作業員の優のその暮らしは過酷で、こんな小さな組織でも搾取と格差が生まれている。
村役場もグルのゴミ処理場の裏の仕事は産業廃棄物の不法投棄。
それはヤクザの金づるの温床で暴力による支配下にあった
家に帰ればパチンコ狂いで金の無心しかしない母親との二人暮らし。
逃げ場のない、ただ毎日を惰性で生きているだけの人生。
優の生活は村から一度は東京へ出たものの訳ありで村にUターンしてきた幼馴染の美咲がゴミ処理施設で働くことになったことで動き始める。
多様性とサステナビリティ社会の旗頭としてゴミ処理施設をクリーンなイメージで打ち出すことで村おこしをしようと提案する美咲。
その顔として優が駆り出される。
はじめは乗り気がしなかった優も持ち前の才で村おこしの顔になっていき、やがてテレビ局の取材を通して観光客も押し寄せてくる村になる。
全ては上手く行ったかのように見えた裏では悲劇が起きていた。
ゴミ処理施設を裏の仕事を一手に管理していた村長の息子透の少しも美咲が自分振り向いてくれない苛立ちと、美咲が想いを寄せ明るい世界へ出て行こうとする優への嫉妬から悲劇が起こる。
その結果には悪いが透には1ミリも同情出来ない。
そんな隠し事も本来であれば隠し通せたはずなのに、美咲の弟の告発から産業廃棄物の不法投棄が明らかになり、ゴミ処理場に埋めた透の遺体も掘り起こされる。
負のバランスが崩れていくが、
それでも今まで通りで大丈夫だ、と息子が遺体で見つかったのに金儲けのために、何もなかったことにしよう、これからはお前と二人三脚でやっていこう、全ては美咲がやったことにすればいいと優に持ちかける村長。
お前はゴミだな。
そして、親父と同じことをする優。
こんな村、無くなればいい
何もかも燃やす事で消し去ろうとする優。
救いのない結末。
この先に優の幸せはあるのだろうか。
キツい。
行き場のないどん詰まりの土地でまさに詰んだ人生。
これも一種の家族という地獄だな。
***
それにしても、優を演じた横浜流星は凄かった。
彼の作品はいくつか観たことがあるはずなのに、いつまで経っても彼本人の顔をいつも思い出せない。
今作でも最後のクレジットが出るまで、優が横浜流星だとは気づかなかった。
それは、彼が作品の中の人間に成り切っているからだ。
<了>