ずっと不穏で宙ぶらりんなままの『終わらない週末』
Netflixで配信しているオリジナル映画『終わらない週末』を観ました。
原題は『Leave The World Behind』
終わってみるとこちらの方が真の物語の主人公は誰だったのかが分かったんだけど、この邦題はなぁ。
とにかく冒頭から終始不穏。
ジュリア・ロバーツ(アマンダ)とイーサン・ホーク(クレイ)の夫婦と2人の子供たち、16才の兄アーチーと13才の妹アーチー。
アマンダが朝に突然思いつきで海辺の別荘を借りて家族で避暑(なのかな?)に出掛けます。
大きなプールと地上2階建てに地下室のある日本人の感覚だと素敵な家。
でも、アメリカのホワイトカラーの人にとってみればプール付きの家は実はそんなに珍しくもないらしく、映画でもよく出てきます。
ニュージャージーに住んでる知り合いの人(某ITベンダーで営業担当ディレクター)の家もプール付きでした。
一晩で1000ドルで半分にはなるだろう、みたいな会話が出てきたので、2000ドルとして約30万円くらい。
Airbnbみたいなものなのかな。
そして、家族で海岸へ行き砂浜で寛いでいると、大型タンカーが向かってくる。
これはおかしいぞ、と慌てて荷物を持って逃げ出し、危機一髪でタンカーは砂浜に座礁。
そこからすでに何かとんでもないことが起こってそうなのですが、何の説明もありません。
そして、家に戻るとテレビもWiFiもインターネットも電話も一切繋がらなくなります。
夜遅く、この家の主だという父親と名乗る男性G.Hと娘のルースがやってきます。
一晩でいいから地下室に泊めてくれと。
父G.Hをマハーシャラ・アリが演じているんですが、この人が出てくるだけでもう得体の知れない不穏感があります。
身分証明書も持っていないというし、本当に家主なのか?どうして家を貸したのに夜中に戻ってくるんだ?
ジュリア・ロバーツ演じるアマンダも全く信用していません。
結局、地下室に泊めることになるのですが(といっても、彼らの家なんですけどね)、もう不穏。
そして、翌朝。
全国でサイバー攻撃があったらしいという断片的なニュースだけ拾って、また情報遮断されます。
そして、庭にやってくる鹿の群れ。
空から降ってくる赤いアラビア語の書かれたチラシ。
まるで昔の戦時中に空からばらまくチラシのよう。
この感じでずっと何が起きているか分からないまま話が進んでいきます。
少しづつ予兆のようなものが、何かとんでもないことが起きてそうだけど、確実なことは何も分からない。
何かが変。
誰かの映画みたいだなぁ、と思って気付いたのがM・ナイト・シャマランの映画ぽいんだということ。
タンカーだけでなく、旅客機も砂浜に続々と墜落してきます。
街へ行こうと思っても道路は大量の無人の新車のテスラで埋め尽くされています。
なんだなんだ、と思っていたら倉庫から自動運転で突っ込んできている様子。
ずっと流れるBGMも不穏
カメラワークも不穏
マハーシャラアリの表情が不穏
とにかくめっちゃシャラマン感がある。
なんだか分からないけれどぐいぐい惹きつけられて観てしまう。
そして、最後はどうやらクーデターが起きて街が破壊されているようだと分かるのですが、
誰が何も目的なのかは最後まで分からない。
だけど、週末ならぬ終末らしい。
最後の方でケヴィン・ベーコンが出て来るので、もっと頭のおかしい感じかと思ったらそうでもなかった。
イーサン・ホークが
「俺は携帯もGPSもなければ何もできない男なんだ」とケヴィン・ベーコンに助けを求めるところがちょっと身につまされる。
確かにそうかもな、と。
お兄ちゃんのアーチー役のチャーリー・エバンス君は知らない役者さんでした。
ちょっと甘めのマスクでこれから人気が出るのかな。
自分で歯を抜くのは止めてね、見ていても痛いから。
ジュリア・ロバーツは終始イライラと起こっているしちょっと残念。
プリティ・ウーマンから35年。
時代を感じました。
マハーシャラ・アリは不穏だったけれど、実は普通のいい奴だったというのも他の映画と同じ。
娘ルースの女優さんも知らない人でしたが、強い印象残してましたよ。
そして、実は君が物語の主役だったのか、というのが妹ローズを演じたファラ・マッケンジー。
彼女はまだ子役の感じを残していますが、独特の雰囲気がありますね。
ローズは昔のテレビドラマのフレンズにはまっていて、旅行に来てネットワークが繋がらないので最終話を観れなくてずっと不満でいます。
そして、ついに独りで自転車で出掛けてしまい行方不明になりますが、
当の本人は偶然入り込んだ無人のお屋敷でスナックをどか食いして、シェルターのような地下室で見つけたのがVHSのコレクションとフレンズのビデオ。
デッキにカセットを入れてフレンズを再生するところで映画は終わります。
ローズだけがきっと地下シェルターでフレンズの世界に浸っているうちに独りだけ生き残るんだろうな。
それにしてもこの映画では何が言いたかったのか?
こういう不穏なまま気が付かないうちに世界は緩やかに滅んでしまうことはわかったけど。
だけど、この宙ぶらりんなまま終わってしまうところが、一部の評価がものすごく悪かった所以なのかな。
映画comでは2点台だったのでどんだけ酷いんだろうと思いましたが、そこまででもなかった。
監督のサム・エスメイルはドラマシリーズの『Mr.ロボット』の人だったんですね。
シャマランとの差別化をこれから出して行ってもらわないと困るんですが、それでも最後までグイグイと観せられてしまう脚本と独特のカメラワークは好感度ありました。
次の監督の作品を楽しみにしています。
それでは!