爆笑&号泣ドラマ「拾われた男」〜大事なことはその時に言った方がよい
こんにちは、makoto です。
NHK BSで放送した後、ディズニープラスで配信、さらにNHK地上波でも放映がはじまったドラマ「拾われた男」全10話、観賞しました。
とても素晴らしいドラマだったので、インプレnoteしておきます。
「拾われた男」は、俳優の松尾諭さんが文春オンラインに連載していたエッセイをベースに制作されたドラマです。
エッセイはまだ未読ですが(マンガ版も出ていた!)、
主人公の名前こそ松戸諭と変更されていますが、ほぼご自身の体験談を元に書かれている自叙伝と言ってもいいのではないか?と勝手に想像しています。
10話のストーリー冒頭は、松戸諭が役者になるために東京に出てきて、家賃6万円で同郷の友のボロアパートに同居するところからスタート、
(それにしてもボロアパートとはいっても立地最高、なんという素晴らしい東京生活スタートだろう、僕も千葉の市川なんかからスタートしなければ違った東京生活があったのだろうか、なんて)
そしてタイトルのまま、
自宅前の自販機の下に落ちていた航空券を「拾った」縁から
モデル事務所に「拾われた」ところからスタートします。
そして一転舞台は兵庫県武庫川へ。
幼少期から高校時代までを、松戸家の家族や幼馴染の友人とのエピソードを交えて語るイントロまでが第1話。
その後、舞台は松戸諭のバイトする都内のレンタルビデオ屋TSUTAYA(ドラマではTATSUYAみたいにもじっていたような)と、事務所を中心に、各話様々な出演者が入れ替わり立ち替わり出てきて、
次はどうなるの?というストーリー展開でぐいぐい引っ張ります。
ドラマ中盤まで松戸諭(ずっとフルネームで書くのも面倒だが、他に呼びようがないのでご容赦)と同居する要潤さんが、いつもの要潤さんのままで素晴らしいです。
何故か僕は要潤さんが大好きで、二枚目なのに二枚目になれないどころかいつも三枚目の役どころや、飄々とした関西地方出身の人(要潤さんは香川県出身ですね)のなまった標準語がいいなぁと思って観ています。
要潤演じる塚本さんはバイト先の先輩なのですが、映画監督を目指して上京してきているのですが、なかなか目が出ません。というかバイトに明け暮れて1本も撮ったことがありません。
松戸諭が所属する事務所のトップスター井川遥の付き人(実話らしい)をすることになった縁から、塚本さんとも知り合いになります。
井川遥の大ファンの塚本さんは、自分が映画を撮る時には出演してくれるという約束を取り付け、今度こそはと脚本を書きはじめますが、結局そのホンは完成しないまま、いや塚本さん本人が満足出来ないままお蔵になり、塚本さん自身も故郷へ帰り実家を継ぐことにします。
夢を追って東京へ上京してきた若者が、もはや若者でもない年齢になった時にやっと現実を直視出来るようになり、自分の夢をあきらる、そういう決断をしたこのシーンには涙してしまいました。
寂しさもありつつ、どこか清々しさもある要潤さん演じる塚本さんの表情は忘れられません。
それ以外にも各話素敵なエピソードばかりで、書いても書いても書ききれません。
井川遥さんがおいくつになられても美しいなぁ、癒やされるなぁ、とか。
薬師丸ひろ子さんの老けメイク(回を重ねるごとに、白髪が目立つようにされていきます)がまたとても似合っていて、コメディエンヌっぷりも健在で、素敵に年を重ねられているなぁ、とか。
安藤玉恵さんはやっぱりここぞというシーンでポイント高いなぁ、とか。
そして、松戸諭の伴侶となる伊藤沙莉さんも、やっぱりめちゃくちゃ演技が自然で上手です。
ドラマは松尾諭さんが売れっ子になってくるにつれ、実際に出演された作品、ドラマ「SP」や映画「進撃の巨人」「シン・ゴジラ」などのシーンも挟んで、その辺りも視聴者の我々がぐっと物語をリアルに感じて引き寄せられる部分かもしれません。
そして、第7話から物語は大きく転換します。
武志が突然アメリカに旅立って15年(くらいでしたっけ?)、行方不明だった兄がStroke(脳卒中)で倒れたから引き取りに来い、という連絡から
舞台は海外アメリカ編へと移り、準主役のような形で松戸諭の兄武志役の草なぎ剛さんがメインの物語になってきます。
今回、NHKの公式宣伝ポスターなどを見返していると、主役の仲野太賀さんと妻役の伊藤沙莉さん、そして草なぎ剛さんの3人なんですね。
全話観終わってからこのポスターを見ると、なるほどそうだったのかと思います。
石野真子さん演じる母も、風間杜夫さん演じる父も、
兄の件をきっかけにこれまでの生き方を見直すことになります。
特にいつも自分のことしか考えていないと家族からは疎ましがられていた父は、これまでまっすぐに息子達のことを見て素直に褒めてあげる、認めてあげることが出来なかった自分に思い至り、素直な気持ちを表現できるようになります。
最終話の帰国する武志を出迎えに行った飛行場でのシーンの風間杜夫さんの演技には泣かされました。
そして、最終話オーラスでの松戸諭です!
家族が少しづつ、いや大きく変わっていったのにも関わらず、今ひとつしっくり来ていない自分にもやもや感があった諭ですが、
特に最後まで素直にいい関係を築けなかったと心残りのあったであろう兄武志のことを、理解し、許し、それまで一方的な見方で誤解していた自分をふりかえり号泣するシーンがあります。
「お兄ちゃん!」と幼かった頃の兄の幻を追いかけて何度も何度も呼びかけます。
本当に胸が詰まるシーンです。こうして書いていても、他人事ながら涙が溢れてきます。いかん。
結局、松尾諭さんは、家族のこと、そしてなによりもお兄さんのことを書きたかったのではないのかなと思いました。
エッセイを、そしてドラマを通して、お兄さんに気持ちをきちんと伝えることが出来たとしたら良かったですね。
やっぱりですね、大事なことはその時にちゃんと口に出して言った方がよいということです。
親孝行したい時に親はなしということわざがありますが、
同じことですね。
素直になれなかったり、ひねてみたり、すかしてみたり、正直になれないことが多いのが人間なんですが、
身近な人、大事な人には、ちゃんと自分の想いを言葉に出して伝えておかないといけないな、と強く思いました。
僕も一昨年に父、昨年に母を亡くしています。
僕は首都圏、両親は大阪と離れて暮らしていましたし、父親の借金のゴタゴタなどで、晩年は縁を取り戻して少し行き来するようにはなっていましたし、たまに会っても父とは普通に話せるようになりました。同じ男同士ですし、僕も親になったから苦労も理解できるようになったからでしょう。
それでも、まだまだ話したいことが沢山ありましたが、もう遅いです。
そして、おとなしくなった父の代わりに、パチンコに明け暮れるようになり何かあるとすぐ金の無心をしてくるようになった母とは、電話がかかってきても疎ましく思うだけになり、そしてそのまま逝ってしまいました。
最後まできちんと向き合って会話をすることが出来ませんでした。
せめて、妻にはきちんと感謝の言葉を伝えられているのかな。
自分も成人を迎えた2人の息子がいる父ですので、色んな部分で重なって見えるところが多かったドラマでした。
今回はドラマ「拾われた男」についてでした。
それでは!
※カバー画像はNHK公式より借用しました。