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想像していなかった未来
今年の3月で還暦になった。
若い頃には想像していなかったことが色々と起きた。
ここで若い頃をいつの時代に設定しようか。
自分では一人前だと思っていても、まだまだ何も分かっていなかった20歳の頃に設定してみよう。
20歳の時、僕は地元守口のとある各駅停車駅前の喫茶店でアルバイトをしていて、
コーヒーをドリップしながら、イカスパゲティを作りながら、山のように溜まった洗い物をしながら、常連さんとバカ話をしながら、有線から流れる洋楽ヒットを聴きながら、
ほとんどの時間を過ごしていた。
大学受験2浪目に入り、いつまでもこのままの生活じゃいけない、やっぱり本腰入れて勉強して、せめて大学には入っておこうと考え出した頃。
まだ何者になるか全く想像も及びつかなかった頃。
***
学園祭でアンルイスのライブ会場の隣を救急車のサイレンを鳴らして運ばれたこと(焼き鳥であたった食中毒)
その後30年間、特に大病とも無縁だったのが、2回も手術を伴う入院をしたこと
1回は父親も患った尿路結石だったこと
それまで全く無縁のコンピュータソフトウェア会社に就職したこと
35年間、同じ会社で定年間際まで勤めたこと
60過ぎても働いていること
まだまだ数年は働かないといけないかも大学卒業後すぐに大阪を離れて、ずっと東京近辺で生活していること
なんなら、普段は関西弁を封印して標準語で話していること!
子供の頃からの賃貸生活から、自分の家(一軒家)を持てたこと
一時はプロも考えた音楽活動は60になるまで形を変えて、一生の趣味として続けていること
1度目の結婚は数年で破綻したが、再婚して2人の子供を授かったこと
自分が父親になったなんて!その子供たちも成人したこと
ちゃんと普通の家庭で普通の暮らしをしていること
これは子供の頃の一番大事な目標だった結局、酒は飲めないままだったがそれはそれで捨てたものもあるけど、得たものもあったこと
父と母を続けて見送り、予想よりは早く身寄りが無くなったこと
幸いにも大きな借金もないけど、貯金もあまり出来なかったこと
コンピューターが形を変えて1人1台いつも持ち歩くようになったこと(スマートフォン)
いつでも誰とでも気軽に連絡がとれるようになったこと
テレビ電話(Web会議)は実現したこと
そのくせ、いまだに朝の電車は混んでいて、40年前と同じことを人間はしていること
テレビそのものは無くなったこと
(これはまだだったか。。)吉野家の牛丼がまだワンコインで食べられること
ネクタイなんてしなくてよくなったこと
本屋がどんどん潰れてしまったこと
仕事で海外に毎年何度も行けるようになっていること
30歳になっても、40歳になっても、50歳になっても、60歳になっても、中身はほとんど変わらないってこと!
***
20歳の頃の自分に言ってあげたい。
心配しなくても、ちゃんと独り立ちして、親を看取って、一軒家に住んで、子供を育て上げて、普通の暮らしをして、好きな音楽を続けていて。
お前の人生もなかなか捨てたもんじゃないぞって。
〈了〉