まこりん

日経新聞の元記者。10年間で検察、外食、機械、エネルギー、経産省、農水省などを取材。2…

まこりん

日経新聞の元記者。10年間で検察、外食、機械、エネルギー、経産省、農水省などを取材。2017年から農業ベンチャーで「都市と農村」をつなぐ仕掛けづくりに従事。コロナ禍をうけた都市住民のライフスタイルの変化に注目。趣味は歴史探訪。

マガジン

  • 新聞記者たちの後悔

    検察官との麻雀事件で注目を集める新聞記者。「今」を追うがゆえの苦悩を描きます。

  • あえていま田中角栄を読む

    コロナ禍によって高まる「都市から地方へ」の機運。半世紀前、おなじ主張をした田中角栄から私たちはなにを学ぶべきでしょうか。

  • 墓碑は語る

    生と死が交差する場所を歩いて拾った、ゆるい小ネタをお届けします。ちょっとの間、タイムスリップしてもらえたら。

  • 歴史を彩る無名戦士に花束を

    明るい話より皮肉な話、調子がいい人より道草を食ってる人。歴史に埋もれた色んなストーリーをお届けします。

  • 検察のリアル

    検察ってなんだろう。その実態を垣間みた元サラリーマン記者が独自の視点で描きます。

最近の記事

権力者たちのたそがれ①ー森舌禍事件の背景にあるもの

はじめに森喜朗氏の舌禍事件が世の中を揺るがしている。 僭越ながら、筆者がみるところ、ことの本質は偉い人特有の独善性にある。 「わきまえる」云々の発言はその表れだろう。 背中の真ん中にこびりついた垢のような、どうしようもない癖が、首相経験者の晩節を汚す結果を招いてしまった。 本欄では森氏のことを論じたいわけではない。 先ほど述べた、偉い人特有の独善性について考えてみたいのだ。 偉い人とは人間は社会をつくってきた。 道を、あるいはピラミッドをつくるにしろ、はたまた戦

    • 新聞記者たちの後悔(下)異国で知った日常の価値

      新聞記者といっても、いろいろな仕事があり、それぞれカラーもちがう。 職種のデパート政治家にひっついて政局や政策を報道するのが政治記者だ。安倍政権の応援団を自任する田崎史郎氏、報道ステーションのコメンテーターだった後藤謙次氏などは有名。かれらはひごろから大物政治家と会食したりして、政治の先を読む術にたけている。特権的な立場にいるからか、なんとなく偉そうな雰囲気がある。 殺人事件や社会を揺るがす凶悪犯罪を追いかける社会部記者はどうだろう。安倍政権をするどく批判する青木理氏はオ

      • 新聞記者たちの後悔(中)超大国との距離感

        きょうは日本経済新聞の元エース記者のことを書く。 筆者もかつて日経新聞で記者をしていた。だから、肌感覚でわかるのだが、日経新聞には「経済報道をリードしている」という意識を強くもつひとが少なからずいる。 知識、人脈、分析力、筆力。これらに裏打ちされたプライド。 いわゆる組織をひっぱるエースを思い浮かべてもらえればいい。日経新聞のエースの場合は「オレの筆がニッポン経済をささえている」という自尊心だ。いろんな意味で影響力があるのはまちがいない。 取材の現場をアフリカのサバン

        • 新聞記者たちの後悔(上)転向

          検察官との麻雀事件で非難をあびている新聞記者。筆者もこの世界に10年間身を置き、いまはふつうの世界で生きているので、叩く側、叩かれる側双方の気持ちがよくわかる。 ひとついえるのは、新聞記者は、いろんな葛藤をかかえているということだ。「癒着している」「情報を垂れ流している」という批判はその通りだ。ただ、それは真剣に情報を取りに行った結果の返り血でもある。ものごとは一面的に見ない方がいい。 新聞記者はずっと「今」をおっている。「今」というのは思春期の青年のこころのように不安定

        権力者たちのたそがれ①ー森舌禍事件の背景にあるもの

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        • 新聞記者たちの後悔
          3本
        • あえていま田中角栄を読む
          3本
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          2本
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          4本
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        記事

          あえていま田中角栄を読む②司馬遼太郎の喝

          「竜馬がゆく」「国盗り物語」「燃えよ剣」「翔ぶが如く」ーー。戦国時代や幕末期のひとたちをいきいきと描き、日本とは何かを問いつづけた国民的作家、司馬遼太郎。 きょうは、かれと角栄の関わりをテーマにしたい。 「土地と日本人 対談集 司馬遼太郎」(中公文庫)という1980年に出版された古い本が筆者の手元にある。土地をテーマに司馬さんが幅広い分野の専門家と語り合うという内容だ。 筆者は司馬作品をすべて読破した司馬ファンだ。司馬さんの自宅(記念館として一般開放)にも足を運んだほど

          あえていま田中角栄を読む②司馬遼太郎の喝

          あえていま田中角栄を読む~①煽り人

          角栄は強気なひとだった。 国民を酔わした一冊の本かれは首相就任直前の1972年に出版した書籍「日本列島改造論」でこんなことを披露していた。 ①「経済成長の果実が全国津々浦々まで行き渡っていない。都市は過密や公害が目立つし、地方は置いてきぼりを食らっている」 ②「これからも経済成長はつづくから、ほおっておいたら、都市と地方の格差は開くばかりだ」 ③「都市にある工場を地方に移し、道路と鉄道網を全国に広げれば、この問題を解決できる。人の流れを変えることで、都市の過密は和らぐ

          あえていま田中角栄を読む~①煽り人

          あえていま田中角栄を読む~はじめに

          筆者は「都市と農業をつなぐ」をコンセプトにした農業系ベンチャー企業に勤務する元日経新聞記者の男(35)だ。 ベンチャー企業では、耕作放棄地を貸農園として再生するビジネスをてがけている。日経記者時代の後半は、全国の農地をまわりながら農業政策の記事を書いていた。 農業というのは、「土地」の一種である農地をいかに有効利用するかという点に尽きる。 だから人一倍、「土地」に関心をもってきたし、長い間、「土地」にまつわるいろんな問題にふれてきた。 そんな筆者からみて、日本の「土地

          あえていま田中角栄を読む~はじめに

          墓碑は語る(下)コロナこぼれ話

          きょうは私たちの暮らしを揺さぶっている感染症の話をしたい。 先日、谷中墓地を歩いていたとき、思いがけず感染症の歴史にふれる機会があった。 明治の軍医うっそうと茂った木の真下に、黒ずんだ墓があった。長年の風化と、木陰ならではの暗さで墓石の文字がよみづらい。 まとわりつく蚊を追い払いながら、字に目をやった。 「故 海軍中軍医 従七位 今居元吉 墓」 とあった。 「医」という文字には、ここで表すことができない旧漢字がつかわれていた。「従七位」というのはかれの官位だろう。

          墓碑は語る(下)コロナこぼれ話

          墓碑は語る(上)スイマーよ!!

          わたしは東京都荒川区に住んでいる。コロナ禍に見舞われたここ最近は、運動不足をすこしでも解消しようと、自宅からほど近い「谷中墓地」(やなか・ぼち)を毎日のように散歩している。 ウィキペディアによると、谷中墓地の大きさは東京ドーム2.2個分。およそ7000基の墓がある都内でも有数の墓地だ。有名どころでは徳川慶喜、渋沢栄一、鳩山一郎の墓がある。 ここはいろいろな想像力をかき立ててくれる。墓には葬られた方の亡くなった日付が彫ってある。平成、昭和、大正、明治だけでなく、享保や寛政な

          墓碑は語る(上)スイマーよ!!

          歴史を彩る無名戦士に花束を④小山田信茂

          筆者は2008年から10年間、新聞記者をしていた。経済系の部署で企業を取材することが多かった。その経験からいうと、倒産する企業、ヤバくなる企業には1つの特徴があった。 退職者が相次ぐのだ。 とあるIT企業は半年間で財務責任者が3人交代したあげく、最終的に廃業においこまれた。融資していた金融機関は「話ができるひとがいない」と苦りきっていた。 別の上場企業では、ど派手なプロジェクトを打ち上げる社長を支えていたはずの役員がある日突然、退職した。話を聞いてみると「あの社長はやば

          歴史を彩る無名戦士に花束を④小山田信茂

          歴史を彩る無名戦士に花束を③細川忠隆

          子は親を選べないーー。いまから400年前、ひとりの青年武将が父との関係になやみ、苦しんだあげく、ある決断をくだした。かれの葛藤がきょうのテーマだ。振れ幅の激しいかれの人生には、読み明かしたあと、一晩眠れぬ短編小説のような磁力がある。 戦国末期に生まれた御曹司きょうの主人公の名は細川忠隆(ほそかわ・ただたか)という。1580年、山城国(現在の京都府南部)で生まれた。ちょうど戦国時代の末期、織田信長(おだ・のぶなが)が頭一つ抜け出し、天下人の地位をかためつつあったころだ。 忠

          歴史を彩る無名戦士に花束を③細川忠隆

          歴史を彩る無名戦士に花束を②孕石主水

          きょうの主人公の名前をただしく読める方はそれほど多くいないだろう。 孕石主水(はらみいし・もんと)という。戦国時代の武将だ。 戦国の雄、徳川家康(とくがわ・いえやす)の人生を長編小説にたとえるなら、家康とわずかに交わりがあった孕石に関する記述は、数行といったところだろう。とるにたらない存在といえば、そうだ。だが、筆者には、孕石のたどった軌跡が妙に気になる。 孕石を紹介するまえに、家康の幼少時代を振り返りたい。きょうのストーリーは2人の不思議な因縁がその骨格をなしているか

          歴史を彩る無名戦士に花束を②孕石主水

          歴史を彩る無名戦士に花束を①高遠頼継

          戦国武将にとって「諏訪」(すわ)という言葉には、背筋がピンと伸びるような、格別の響きがあったのではないだろうか。なにしろ諏訪の神様は「戦いの神様」だからだ。 日本最古の神社の1つである信州の諏訪大社(長野県諏訪市)は、全国各地に1万以上ある諏訪神社の総本社で、古代より祭神は「日本第一大軍神」とあがめられていた。信州・諏訪より勧請した分社で戦勝を祈願したのち、合戦におもむくのが戦国の武将たちのならわしだった。 諏訪大社は上社、下社など諏訪湖周辺にある4つの宮からなっている。

          歴史を彩る無名戦士に花束を①高遠頼継

          新米記者が見た検察④黒川さんのこと

          連載も最終回になった。 きょうは渦中の人物、黒川弘務(くろかわ・ひろむ)さんのことを書く。 有名人はじめて見たのは、筆者がポップコーンを食べていたときだった。 2008年秋。法務省主催のイベント「赤れんがまつり」でのこと。すらっとした細身で、めがねの奥の眼光がするどい。「このひとが、黒川さんか」。しばし見入ったのをおぼえている。 とにかく有名だった。 「できる」「豪腕」「顔が広い」「政治力がある」。記者連中からこんな評判があがっていた。 うろおぼえだが、当時の役職

          新米記者が見た検察④黒川さんのこと

          新米記者が見た検察③居酒屋での誘惑

          使命”巨悪を眠らせない” 検察の王道コースを歩むひとたちがよく口にすることばだ。社会を揺るがす”悪”を摘発し、是正していく。検察を端的にあらわす表現といっていい。 相手が総理大臣であっても、偉い財界人であってもひるまない。絶大な権力をにぎっているからこそ、黒川検事長の定年延長問題がこれだけ国民の関心の的になっているわけだ。 事件の糸口検察はどうやって事件をみつけてくるのだろう。 たとえば、最強の捜査機関と呼ばれる東京地検特捜部の場合、当時は3班にわかれた捜査体制をしい

          新米記者が見た検察③居酒屋での誘惑

          新米記者が見た検察②深夜の牛丼

          禅問答毎日、午後4時が憂鬱だった。 検察を担当する記者たちは東京地裁にある記者クラブに詰めていた。4時になると、おもむろに地下通路をわたって真向いの検察庁舎にむかう。検察幹部の部屋を訪ね、取材するためだ。 ここで、東京高検のR刑事部長と筆者とのやり取りを再現しよう。東京高検刑事部長といえば、いまでいうと、黒川高検検事長の直属の部下にあたる重要なポジション。ちなみR刑事部長は現在、経済事件を取り締まる公的組織のトップを務めている。 筆者「■■の事件、読売に▼▼みたいな供述

          新米記者が見た検察②深夜の牛丼