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和束での手作り茶


京都府にある和束町と呼ばれる場所。

京都府内で最も多く茶が生産されている町です。(京都府の約40%)
その大部分は「宇治茶」として流通しています。抹茶の原料である「碾茶(てんちゃ)」煎茶の生産が盛んで、町にある山の斜面の多くが茶畑。
その景色は壮観です。

2021年5月。
私は茶畑で季節労働者として働くことになりました。
和束町では今回の私のように、地域外の方々を茶の生産の繁忙期だけ受け入れ雇用しています。このことを「援農」と呼んでいるようですね。

何かに導かれるように


和束町に着いて数日後、援農の間、住まわせて頂く家の同居人からこんな言葉を聞きます。

「この家の裏に茶畑があるんだけど、その持ち主さんと先日話をしていたらお茶摘みとか自由にしていいよって言ってた。今度摘ませてもらったお茶でお茶作りしない?」

そしてその数日後、お茶の生産者であり、お茶作り教室を開催している方が台湾製の焙煎機を持ってお茶の作り方を教えてくださることになった。

台湾製の焙煎機でお茶を乾燥させているところ。

そんな話になるとは思ってもみなかった。
農作業をする。それ以外はノープランだったから。

何人かでお茶を摘み、それぞれ思うような方法で茶を仕上げていく。

私はドライヤーで乾燥させる。
私は中華鍋で乾燥させる。
私はお腹の中で発酵。
私は一緒に寝る?!

作り方によってこんなにも違うお茶が出来上がる。そんな発見があって皆で作るお茶はとても楽しかった。

お茶の葉を布でくるんで揉んでいきます。


その日から私は毎日何かにとりつかれたようにお茶を作り始めた。

早朝に茶畑へ行って茶摘みをし、ざるに並べて萎凋(いちょう)[水分を抜いていく。茶作りの工程の一つ]させている間、茶の農作業の仕事へ行き、帰ってきたら再び茶を作り始める。

「こうやったらどうなるのだろう」「今度はこうしてみよう」

紅茶、烏龍茶、釜炒り茶。様々な品種で、様々な萎凋、発酵具合でそれはそれは沢山のお茶を作りました。

お茶の葉を摘んで、ザルの上で萎凋中。

その中で考えていたことがあります。

この茶畑は現在は茶生産をされていない、いわゆる放置茶園

私がここに来るずっとずっと前から持ち主のご先祖様が代々茶を作ってきた場所。人生の多くの時間を過ごしてきた場所。

自由にお茶摘みして良いと寛大な言葉をかけて頂いたものの、沢山作ったこのお茶は私のものではないのです。

農家さんと共に農作業をし、話をし、お茶を作れば作るほどその思いが募っていきました。

私が作ったお茶を飲んでみたいと言ってくださった方がいました。それはとても嬉しかった。でもその前に伝えなくては…

言葉でうまく伝える自信がなかった私は、手紙を書くことにしました。

自分がどんな人で、どんな目的をもって和束町に来て、そんな話から
お茶の楽しさや素晴らしさを伝えたい。そのために自分が作ったお茶を飲んでみたいと言ってくださった方の元へ届けたいと思っていること。
正直に手紙にしたため、持ち主さんの所へ持っていきました。

すると持ち主さんは快諾してくださっただけでなく、もっとこうしたら楽しいよね。とか、こんなこと挑戦してみたらいいんじゃないとか。沢山のアドバイス。そして背中を押してくださったのです。

和束の茶畑の風景


ある晴れた日、持ち主さんと、同居人と私で山の上にある茶畑へ茶摘みに行きました。

太陽が燦燦と輝く、自然の風が心地よく吹き抜ける場所でした。

チャレンジすることが大好き。と仰っていた言葉通り。ビックリするほど沢山の品種のお茶の木が植えられている茶畑でした。


お茶を揉んでいるところ

お茶の紹介


その中でも特に気になったのが、「みなと1号(和束1号)」

個人で育成、選抜された茶の品種で調べてもほとんど情報が出てきません。

茶業関係の方でも知っている方が少なく、和束の地域のごく一部の方だけが生産されている品種のようです。

この品種の新芽を食べてみると、しっかりした渋みと共に烏龍茶、紅茶を飲んだ時に感じる柑橘フルーツのような香りを感じた私は紅茶を作ってみることにしました。

優しく揉んで作ったことで、渋みは少なく、淡く甘い香りのする紅茶になりました。
お子様からご年配の方まで、どんな方でもどんな時でも寄り添ってくれるような温かさのある紅茶になってくれたと思います。


もう一つは 「おくみどり」

同様に新芽を食べてみると歴然!渋みがほとんどなく、甘くて優しい味わいがするのです。このお茶で緑茶(釜炒り)を作ってみることにしました。

茶摘みから帰ってきて、意図したわけではないのですが自然に萎凋され、柔らかい花のような香りがするところから作り始めた緑茶(釜炒り)は本当に優しく、甘く香る美しい味わいの茶になりました。

手作りで釜で炒ったときにしか感じられないスモーキーさにも似た「釜香」(かまか)が加わることで、優しさ、甘さ、スモーキーさ、滋味深さなど
絶妙なバランスで調和する緑茶になってくれたと思います。


最後に 「やぶきた」

現在、日本で流通している茶の多くは、この「やぶきた」という品種で作られていて、その多くは皆さんが普段飲まれている緑茶です。今回は緑茶ではなく、敢えて烏龍茶を作ってみることにしました。

天日干しをしたことで、ミルクのような甘い香りがあり、
ハーブに似た華やかな花のような香りが口の中いっぱいに広がっていきます。
「やぶきた」らしい程よい渋みもアクセントとなって、華やかで前向きな気持ちにさせてくれる烏龍茶になってくれたと思います。

出来上がった烏龍茶を縁側で試飲する


日本全国の茶産地を回り、生産現状や茶づくりについての発信をしています。
農家様や現地の方々との関係を大事にしています。それぞれの想い、考えを感じたままにお伝えし、茶について関心を寄せてくださる方が増えてくださることを願っています。

日本茶についての疑問や問い合わせなど、大歓迎です。
私もまだまだ道半ば。一緒に楽しくお茶を知っていきましょう!

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ライブ配信で白川茶の茶師の方と共にお茶淹れ
香川県でのお茶とイタリアン料理のペアリングイベントの様子


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