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相手を変えようとしない、ということ
トーン・テレヘン著の『きげんのいいリス』(新潮社)の中は、のびやかな空気で溢れている。様々な性格の動物が登場するが、互いにその個性を受け入れている。「受容」の精神世界である。今回は、その中のリスとゾウのやりとりの話を取り上げてみよう。
ある早朝のこと、リスは突然ゾウの訪問を受ける。リスは迎え入れるのだが、その時ゾウは勢い余ってリスの家のドアを壊してしまう。詫びるゾウに対してリスは寛容さを示した。ところが、家に招き入れられたこのゾウはさらに、紅茶が入ったカップを手から滑らせ、その瞬間床まで落とすまいとして身体を勢いよく動かした拍子に今度はテーブルまで壊してしまう。そんなこんなでリスの部屋の中はメチャメチャになってしまった。大変迷惑な客である。
そんなゾウに対してあなたならどう反応するだろうか?
「少しは落ち着いてもらえませんか?」
「あんたのせいで生活がめちゃくちゃになった」
……少なくとも、相手を責めるような気持ちが出てくるのが自然な反応かもしれない。
ところが、このリスの反応はこうである。
「きっと自分でもどうしようもないんだ」
(ゾウが去った後のめちゃくちゃになった部屋を見回して)
「さあ、引越しするいい機会かもしれない」
と、顔をくるくる洗い始めた…。
この物語を読んで、この「ちょっと迷惑な」ゾウに似た「あの人」の顔が思い浮かんだかもしれない。そして、常日頃から「あの性格はなんとかならないものか」とうんざりした気持ちになっているかもしれない。
そして、
「あの人はもっとこうすべきだ」
「こっちが迷惑しているのに気づいていないのだろうか」
と憤慨するのである。
でも、残念なことに「あの人」はきっと変わらない。それどころか、こっちが迷惑していることすら恐らく気づいていない。そしてストレスは、ぷんすこしているこちら側に溜まってくる。
ではどうしたらよいか?
リスを見倣いたい。
「あの人は自分でもどうしようもないんだ」
(あの人が原因で生じた状況を精査して)
「これはついに〜するいい機会かもしれない」
と、自分の見方、解釈を変える方が、実はストレスが少ない。
とはいえ、ここに登場するリスは、そんな小難しいことまで考えてはいないだろう。彼はゾウのことを迷惑とすら思っていない。ゾウは自分の大切な友達であり、でも時々失敗する。ただそれだけ。それを普通に認め、受け入れている。そしてこれからもゾウと友達で居続けるだろう。
そんなリスのような性格でありたい。