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沼津のマルサン書店仲見世店へ愛を叫んでいたら、一年半後思いが通じて最終的に協力してもらってた話

今日、マルサン書店仲見世店が閉店します

今日、5月31日に沼津駅南口にあるマルサン書店仲見世店(以下、マルサン書店)が閉店します。
GW明けに閉店の一報を聞き、ざわざわした気持ちで今日まで過ごしてきました。
私は御殿場市在住のため、頻繁に通えるほどの距離ではないのだけど、閉店を知ってから今日までなんとか3回いくことができました。

閉店準備のため、こざっぱりしていく店内の中でもやっぱり”マルサンらしさ”は健在で、行くたびに本を購入。

GW明けにマルサン書店で買った本。Amazonのレコメンドには表示されたことない。『水中考古学』は最後の一冊だったはずだけど、後日さらに入荷してた!(マルサン書店の攻めの姿勢!!!)

2020年4月、ぬまつーで最初に一方的なラブコール

マルサン書店と出会って勝手に”静岡東部の智の拠点”と呼び、一方的に愛を叫んできました。
最初に愛を叫んだのは「ぬまつー」。

この時、ぬまつーメンバーに「マルサン書店の知り合いいない?」と聞いたんですが手がかりはありませんでした。その後も沼津市民に何度か聞いたんですが、辿り着けず…。
この時は、いつか巡り巡ってつながったらいいなって思いました。

なんで私、マルサン書店がこんなに好きなの…?

とはいえ、「なんでこんなにマルサン書店が好きなのか…?」自問自答する日々。決して蔵書がすごい多いというわけではないし(2021年6月、売り場がワンフロアに縮小)、街の商店街にある普通の書店。静岡県内にもこれくらの本屋はたくさんある、と思う。

それでも好きなのは、街の普通の本屋だけど書店員さんが棚をつくっている感じが伝わってくるんだと思う。
あと、エントランス入ってすぐの新刊・注目書籍が平積みになっているとこ。
Amazonランキングには入ってこない新刊も多く並んでいて、なによりコンプレックスや不安を刺激するような自己啓発本、対立構造を煽る本などがほとんどないのが心地よかった。

マルサン書店が開催するフェアも魅力で、
毎年、夏休みには沼津東高の先生の推薦図書がお手製帯で並んでいて、
とにかくどれも毎回楽しみにしていました。

ぐるっと店内一周しても気持ちが沈むことなくて、Amazonで見たこともない本と出会うからワクワクドキドキする。

とくにレジ横の棚、静岡県に縁のある書籍と一緒に並んでいる本は、ちょっとマルサン書店の攻めの姿勢を感じるラインナップで、それが楽しみで通っていたと言っても過言ではありません。

そうそう、沼津の古本屋 書肆ハニカム堂で知り合ったセージさん(東京→沼津移住者)とも「マルサン書店がいかにいい街の本屋か」トークで盛り上がりました。

街の本屋の底力を感じた「宇佐見りん沼津出身」説

そんなこんなでマルサン書店は大好きだったわけですが、個人的に衝撃だったのが、作家の宇佐見りんさんが沼津出身だと報じた一番手がマルサン書店だということ(多分)。

2020年9月に発売された宇佐見りん著『推し、燃ゆ』。センセーショナルなタイトルが気になってチェックしていました。
同時期にマルサン書店へ行くと発売直後から小規模ながらもPOPを使ってフェアを展開してました。
そのPOPに書かれていたのが、

「沼津市出身」の文字

「え? 沼津出身? 神奈川じゃなかったっけ?」と、
どうしても気になって調べたところ、出版社の河出書房新社のサイトにも、Wikiにもまっっっっったく「沼津出身」とは書かれていませんでした。
「マルサン書店の暴走? 誤報? でも、なんでこんな間違いを…?」
とモヤモヤしながらも、誰にも言えず心のうちに閉じ込めました。


しかし、その後くらいから静岡新聞はじめ各種メディアが「沼津市出身」、「沼津に縁のある作家〜」と、取り上げるようになりました。
「マルサン書店は正しかったのか!」と反省するとともに「じゃあ、なんでマルサン書店はいち早くその情報を知ることができたのだろう?」と思うように、

「編集部と書店に間にネットワークがあるのだろうか?
でも、だとしたら何故マルサン書店だけしかPOPだしてない???」

と、ますますマルサン書店が気になるようになりました。

宇佐見りん氏最新作『くるまの娘』はもちろん、マルサン書店仲見世店で購入。普段、カバーをつけない派だけど、この日はお願いしました

転機は2021年秋、フリーペーパー『まちの感触』の特集がマルサン書店に決定

私、普段はフリーランスで執筆・編集業をしています。
ちょうどその頃、沼津市の街なか個人店の魅力を伝えるフリーペーパー『まちの感触』の制作に関わっていました。沼津市が発行するフリーペーパーでは、「五感」をテーマに毎回違ったコンセプトで展開しています。

その企画会議でマルサン書店が取材候補に上がりました。
一度は小さめの企画枠に納まりそうだったのを阻止し(みんな同じ気持ちちでした。うれしい!)、さらに速攻で「私が取材いきます!」と宣言。
そうして無事に2021年秋号のテーマ「触」の特集にマルサン書店が決定しました。

ぬまつーで愛を叫んでから1年半、マルサン書店の中の人と接点を持つことができたのです。
取材時は本当に楽しくて、カメラマンもデザイナーもみんな前のめりになって増田店長の話を聞いてました。

この取材のなかで宇佐見りんさんのお祖母様が沼津市在住でマルサン書店ユーザーだと知りました。お店に来て直接お話されたそうです。
宇佐見りん沼津出身説の謎が解けてスッキリ。そして、街の本屋で起こるコミュニケーションの面白さを実感しました。

記事は今もPDFで読むことができるので、よければぜひご覧ください。

『NUMAZU まちの感触 vol.4 触』
表紙も巻頭ページも全部マルサン書店
『NUMAZU まちの感触 vol.4 触』より
取材・撮影に協力いただいた増田店長・スタッフのみなさんに感謝しかない

勇気を出して…マルサン書店へ協力をお願いしてみる

マルサン書店へ完成した『まちの感触』納品後、個人的に運営している静岡東部のローカルメディア 「On Ridgeline 」に「毎回、マルサン書店のフェアを掲載したいです」とお願いしたところ、快諾いただきました。

一方的に大好きで繋がりたいと思いつつ、なんのツテもなかった。伝える術もなかった。
それがこうして繋がってマルサン書店のみなさんとお話できたこと、一緒に何かできたこと。本当に奇跡みたいだなって思います。

5月29日に最後の買い物をしました。
店内にあった閉店のお知らせ、「閉店セレモニーは行いません」の文字、
マルサン書店仲見世店っぽいなって思いました。なんとなく。

マルサン書店仲見世店のみなさま、おつかれさまでした。
たくさんの出会いをありがとうございました。

※ 沼津駅南口の仲見世店は閉店しますが、駅北店とサントムーン店は引き続き営業しますよ!

そいえば、一箱古本仲間との初対面もマルサン書店

個人的に趣味で県内の「一箱古本市」に出店しています。
わりとおなじみのメンバーなのですが、さかのぼってみると2017年にマルサン書店の店頭で行われた一箱古本市に今のメンバーが参加していたことが発覚。

月刊イヌ時代編集長のまるちゃんも、すその一箱古本市主宰者のぞうさん書店さんも、書肆ハニカム堂さんも、この日出店していたらしい。
私は客として、参加していくつか本を買った記憶があります。

認識してなかったけど、それが今につながっているのもおもしろいなって思います。

最後に、大好きなgrowbooksの一言を置いておきます。

「本屋は儲からないけど、本屋って文化だから」

知らない世界、地層みたいな背表紙、漂う選者の存在感、
本屋から滲み出す文化の香り…そういうのに惹かれてリアル書店に通っているんだよなあ。

富士市のgrowbooks、名古屋のザ・リブレット、そしてマルサン書店仲見世店。気づけば、お気に入りの新刊書店はどんどん消えていきました。
これからどこで本を買えばいいだろうと今はまだ後ろ向きです。




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森岡まこぱ
静岡県東部で執筆・編集業をしています。みなさんからのスキが励みになります!