8月後輩への一冊、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』と『ワイルドサイドをほっつき歩け』
高校時代の後輩と本の押しつけ愛…「先輩と後輩の往復書籍」シリーズ。すでに毎月というルールは崩壊していますが、がんばってます。
「後輩よ、初心に戻ろう」というメッセージを込めた一冊
さて前回、後輩から『わたしたちに許された特別な時間の終わり』を送りつけられ、うんうんと苦しみながら読んで、noteに感想を書きました。その最後の一言。
とりあえず、後輩に伝えたいのが「できたらもっと感想を書きやすい本にして」ということかもしれない。大江健三郎賞作品は難易度が高い!
これに尽きます!
ちょっと、落ち着け。後輩、初心に戻ろう。ということで、次の一冊はベストセラー作品『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』に早々に決定しました。
しかし、大ベストセラー作品、さすがに後輩も読んでいるんじゃないかなあ? いや、彼女は捻くれているから読んでないのかもしれないなあ(←こっちに期待)。
で、今回問題になったのが、すでに読んでいた場合の"保険の一冊”を送るかどうか。
既読だった場合の"保険の一冊”どうするか問題
ブレイディみかこ著『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』は決定として、次の一冊。これを決めるのに大いに悩みました。
候補は2冊、
まず、続刊に近い『ワイルドサイドをほっつき歩け ――ハマータウンのおっさんたち』(ブレイディみかこ著 筑摩書房 刊)。
もう一冊は、私が大好きな沼津のマルサン書店で遭遇した『ふるさとって呼んでもいいですか: 6歳で「移民」になった私の物語』(ナディ著 大月書店 刊)。
前者は同じ時代を生きる10代と中年という世代間の違い、
後者はイギリスに住む日本人(とその家族)と日本に住むイラン人の違い。外と内みたいな違いがあるのかもしれないと思った。
そういうのを後輩はどう感じるのかな?と思った。
この時点では、2冊とも未読。
とりあえず、『ワイルドサイドをほっつき歩け ――ハマータウンのおっさんたち』を読んでみた。
『ぼくはイエロー…』の美しい結末と『ワイルドサイド…』の胸キュン
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』さすが、おもしろかった。最後の終わり方も美しく、読み終わった時にはせつない気持ちになった。少年たちがキラキラして、眩しくて。こんな文章を書きたいと思った。
その一方で、その時代の空気を感じながらスイスイと柔軟に渡り歩く彼ら(10代)には、私は”もう戻れない”というのもひしひしと感じてしまい…イギリスが舞台ということも相まって、読み終わったら随分と遠くの話になってしまったなあ。
突然、そんな気持ちに襲われてしまったのだ。
そんな切なさを引きずったまま『ワイルドサイドをほっつき歩け ――ハマータウンのおっさんたち』を読み始めたところ、また、パアッと視界が広がった。
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』と同時代の話のはずなのに、出てくるのは中年の英国の労働者階級のお腹の出たおっさんたち。飲みんだくれて、家族から煙たがられて、老い先を案じる、時には若い女性に熱を上げたり…。とにかく、踏んだり蹴ったり。悲喜こもごも。時代に翻弄されながら、変わったり、変わらなかったりするおじさんたちの姿がどうにもこうにもチャーミングなのだ。
チャーミングに感じられるのは、筆者のブレイディみかこさんの見事な文章力なのだと思うけど。
わたしも、50、60になって右往左往しているのだろうか。こんなチャーミングに、生きることができるのであれば、中年も捨てたもんじゃないな。
読後、「登場したおっさんたち、すべてに幸あれ!」と願うと共に、
胸がキュンキュンとして
なんか未来を信じたくなった。
後輩へ2冊とも送ってみる
こんなにキュンとしてしまってはしょうがない。『ふるさとって呼んでもいいですか: 6歳で「移民」になった私の物語』は、またの機会にして、
ブレイディみかこ作品2冊を後輩へ送ることにした。
後輩からは「家族が持っていたけど、実は『ぼくはイエロー…』読んでないんです」とメッセージがあった。もちろん、『ワイルドサイド…』も未読らしい。よし、よし。
最後に
私、常日頃から息子には”全力で楽しんでいる親”の姿を見せていきたいと思っている。
大人が楽しい街(場所)であれば、子供たちは「未来は明るい」と感じられるはず。
でも、時々息切れしそうになる。
そんな時に、チャーミングない英国のおっさんたちと出会えたことが、とにかくとてもうれしいのだ。