『女優のNいて』
いつもの休日とかわらず
昼過ぎに起きて
そんでいつものように
コンビニにメシ買いに行って
そしたら雑誌の棚のまえに
女優のNいて
こんな僻地に
人違いだろって思ったけど
いやあれは
あのオーラは本人
近づいて恐る恐る話しかけたら
ニコッと微笑んでくれた
握手を求める勇気はなくて
店員も他の客も
まったく気づいてなかったから
俺のせいで騒ぎになったら
申し訳ないと思って
足早に去ったわけ
でそんなことがあったのも
なんだかんだ忙殺されて
忘れてたんだけど
こないだぼうっとドラマ観てたら
うちの近所がロケ地だったわけ
あーなるほどね
撮影の合間に来てたのか
えでも
超大物女優のNが
わざわざ自分でコンビニいくかな
下っ端のやつに
買いに行かせればいいのに
なんて思ったのも
まぁしばらく忘れてて
こんどはトーク番組観てたら
Nが話してて
撮影の合間の
コンビニでのエピソードだって
つまり俺が声掛けたときのね
Nが言うにはその日は
どうしてもセリフが頭に入らなくて
でもそれを回りの人に悟られたら
申し訳ないので
休憩の合間にコンビニに行って
立ち読みをするふりをして
雑誌に台本を挟んで
一生懸命覚えたんだって
そういえばあの時N
競馬の雑誌読んでたよなって
ハッと思い出したんだよな
ファッション誌じゃないんだって
さすがの俺も思ったもんな
そんなことも
しばらく忘れてたんだけど
さっきその例のコンビニで
俺は暇つぶしに写真週刊誌を
立ち読みしてたわけ
そしたら
”女優N コンビニで競馬雑誌を立ち読み”
って
隠し撮りが載ってて
その隣に俺っぽい影も映ってるし
なんかウケたって話