『でそのボンクラがさらに驚くことに』
(まえがき)
さて一言お題シリーズラストの5作目は、まえがきから失礼します。まずは出題いただいたアヤコ14世様、ありがとうございます。
で、いただいたお題が「ボンクラ」だったんですが、すでに拙作に同タイトルがあるんですよ。だから今回はその続きを書くことにしました。
(前回までのあらすじ)
世界征服をたくらむ極悪秘密結社「暗闇前衛半裸旅団」に恋人を囚われてしまったシンイチ(あだ名はボンクラ)。まずは戦闘の資金集めにとUberと出前館を掛け持ちするも、ラーメンの汁をこぼしてしまったり、チーズ牛丼のチーズをつまみ食いしたことがバレてしまったりとクレーム案件続発。今後の先行きやいかに…
↑嘘です
(前回までのあらすじ(本当))
こちら『ボンクラ』を先にお読みいただけると幸いです。このストーリーがなんだかここ最近の話題になっている事柄を彷彿とさせるのは偶然ですよ。そういえば出題者のアヤコ14世さんもなんとなく「ボンクラ」というワードを思いついたとおっしゃってます。偶然ですね。
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「でそのボンクラがさらに驚くことに、だぞ?」
なおも酔いが回ったせんせいがはなしを続ける
「常人じゃボンクラの仕事は務まらないわけ」
もっともだなぁ
きけば
うちの学校にいたボンクラ…さん…?は
当時すでにけっこうな歳だったと思うけど
1964年の東京オリンピック
柔道のにっぽん代表の
最終選考までのこったひとらしくて
戦慄したよ
そんなすごいひとに対して
俺たちは
上履きの底を顔になすりつけたり
彫刻刀で●●が●●まで●●したり
そしてそれをしゃしんに撮って
現像してろうかに貼り出したり
文集にこっそり載せたり
まぁ酷いことをしていたわけでぇ
いまじゃ考えられないよね
ネットがない時代でせいぜい助かった
ボンクラさんの忍耐力
すさまじい
謝罪したいなあ
なんて俺たちが言うとせんせいは
「いいんだよそういう時代だし、そういう仕事なんだから」
なんだかそれ以上
酒はすすむことがなく
「たぶんもう亡くなってるよ」
とせんせいは言いながら
締めのシャーベットを目の前に
すっかり眠りこけてしまった
寝息を立てるせんせいの
はだけたシャツの首筋からは
鮮やかな登り龍が
こちらを睨みつけていた