『NASAと提携していて』
休日
特にすることもなく
部屋でぼうっとしていたら
インターフォンが鳴って
宅配便かと思ってつい開けてしまったら
そのスーツの男はセールスマンで
葬儀屋だとのこと
いや葬儀屋って飛び込み営業するのって
つい笑ってしまったら
いまは競争が熾烈だから
顧客の奪い合いなんだって
それは納得したけど
俺はまだ20代だから
さすがに事故でも遭わない限りは
死なないですよって言って
男はそんなことは承知ですと
話だけでもというから
どうせ暇なもので
部屋へ通したわけ
NASAと提携していて
宇宙に散骨するんだって
話が急だな
なかなか考えましたねって
唸ってたら
実はかなりの人気で
すでに50年待ちなんだとか
つまり今25歳の俺が
宇宙に散骨してもらえるのは
早くて75歳になってから
そういうことらしい
なるほどだから俺みたいなところへ
面白そうだけどカネないし
そもそも死んだあとなんて
興味ないんでって
丁重にお断りしようとしたら
お客さま窓の外をご覧なさいって指さされて
そしたら昼間だったはずが
いつの間にか真っ暗
それからはされるがまま
どこからともなくムーディな曲が流れて
優しくうしろからそっとハグされたと思ったら
耳もとで囁かれる
話が急だな
男には興味ないんでって
丁重にお断りしようとしたら
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ファイヤー
点火してしまったよ