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『あまりに無慈悲な被造物は』
X博士はついに造り上げた
あらゆる頭脳戦も
いかなる体力勝負も
ぜったいに
人間には負けない
完全なロボットを
長年の目標であった
その完成を果たして
X博士は
生きる目的を
見失ってしまいそうな
予感を覚えた
もっとも
あまりに無慈悲な被造物は
X博士の
思うところではなかった
だからちょっとだけ
手加減をして
あんまり
最強すぎないていどに
調整を施した
--
Y博士はついに造り上げた
あらゆる頭脳戦も
いかなる体力勝負も
ぜったいに
人間には負けない
完全なロボットを
長年の目標であった
その完成を果たして
Y博士は
生きる目的を
見失ってしまいそうな
予感を覚えた
もっとも
あまりに無慈悲な被造物は
Y博士の
思うところではなかった
だからちょっとだけ
手加減をして
あんまり
最強すぎないていどに
調整を施した
--
Z博士はついに造り上げた
あらゆる頭脳戦も
いかなる体力勝負も
ぜったいに
人間には負けない
完全なロボットを
長年の目標であった
その完成を果たして
Z博士は
生きる目的を
見失ってしまいそうな
予感を覚えた
もっとも
あまりに無慈悲な被造物は
Z博士の
思うところではなかった
だからちょっとだけ
手加減をして
あんまり
最強すぎないていどに
調整を施した
--
あるとき
X博士と
Y博士と
Z博士の
ロボットを
人間様とたたかわせるまえに
互いにぶつけてみようと
そういう話になった
競技はなんでもいい
チェスと
ボクシングにきまった
ゴングは鳴った
どうぞ
どうぞ
どうぞどうぞ
ロボットたちはどれも
動くほどに
エネルギーを蓄える
そういう仕組み
もうかれこれ
300ラウンドは
続けている
どうぞ
どうぞ
どうぞどうぞ
各々の博士によって
調整された
ロボットたちは
どこまでも
終わりのない
たたかいを
続けるのだろう
どうぞ
どうぞ
どうぞどうぞ
(あとがき)
拙作はひとことお題から「利他の心」という素敵なテーマをいただいたいとうゆみさんの導きによるものでございます。
たまにはこういうSFっぽいのも書けるんですよわたし。ねぇどうでしょう?
ちなみにチェスとボクシングを交互にやる競技って実在するんですよ。豆知識ですね。3人、否、3体でどうやってやるんだっていうのはほっといてくださいだって2つより3つのがしつこくて良かったんですから。