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お前はいない 風立つ日曜の朝 麻の寝具を揺らす風に まろい午后の灰皿の影に 午睡を誘う玉ねぎの薫り立ち込める夕べにも おまえはいない!おまえはいない! 東の魔女の漆黒立ち込める夜がきた それでもおれは、不在の昨日を求めるのだろう #詩 #自由詩 #散文詩
夜汽車に乗って ぼくは行くよ 打ちひしがれた河川敷 十月の海に沈んだぼくの家 今じゃフジツボがぼくの勉強机に住み着いてる 夜汽車に乗って ぼくは行くよ 君も来ないか ぼくは行くけど #詩 #自由歌 #散文詩
ばらが死んだ 残されたおまえ 白き花よ おまえの背筋はどうしてそう ぴんと伸びているのか 悲嘆に暮れ 枯れることすら 忘れたのか いや、きっとそうではない あえかなる諸手は白い虚空を抱き ここにひとつの永遠がある #詩 #散文詩 #文学 #哲学
気を着けろ 火を着けろ あの女の眼は模造宝石 おれを機械煙草の煙ほど無力にする #詩 #自由詩 #散文詩
どこへ消えた どこへ消えた ひとりぼっちのぼくのともだち いつかのよるまで ベッドの下に いつものところに ぼくのとなりに 雪のチュチュ着たバレリーナ とかいのシロクマ きんいろきつね 小春日の けだるい日差しと 冬の風 ぼくはかれらを思い出す またいつか あえるだろうか 「あえるを信じて」 君からの贈りもの 古いハーモニカ #詩 #文学 #自由詩 #散文詩 #秋 #冬
ぼくは知ってる きみがどうして 爪を噛むくせがあるか 地球はまるいね コーヒーはにがい 世界はつまらない きみの寝癖はきみの手におえない ぼくはしってる きみがどうして朝がきらいか でも今日は にちようび 世界でただひとつ 仏頂面をやめられる場所へエスケープしよう メリーゴーランドの白馬の上でしか微笑めない きみよ それでもいいじゃないか 寝癖のままで降りておいで きみのえくぼが見たいんだ #詩 #文学 #自由詩 #散文詩
月をみて まだ乙女が涙さしぐさんでいた昔 貴女はその涙で 乙女らに手紙を書いた そのインクはブルー・グレー 高貴なる色 知性の色 手紙はその胸に 黒曜の鏡を持つ乙女だけに 鳥が届けた あえかなる乙女たちは はじめてその黒曜の瞳を鏡に映し そうして気づいた わたしの涙はブルー・グレー 高貴なる色 知性の色 そうして彼女らは涙をぬぐい 月を棄て 歩きだした サッフォの彗星の降る夜 あなたの墓前を訪ねる この黒薔薇はあなたに相応しい かつてブルー・グレーの涙を流し
午後 日のたまり 乳色の湖 かのひとの銀の髪は波打ち 水面に愛の譜を描く 内緒話 くすくす笑い お揃いの苺 いつもの午後 ぼくらが生まれる時間 やさしい鳩の胸 ぼくはその和毛に頬を埋め そっとくちづけた #詩 #文学 #自由詩 #散文詩
太陽よ 最後の一瞥を 寒き田 最後の愛撫を そのやさしい黄金の手で 遠き日を寝かしつけておくれ 連れて行け 連れて行け こうしておれは夜を失った #詩 #自由詩 #散文詩 #文学