月をみて
まだ乙女が涙さしぐさんでいた昔
貴女はその涙で
乙女らに手紙を書いた
そのインクはブルー・グレー
高貴なる色 知性の色
手紙はその胸に
黒曜の鏡を持つ乙女だけに
鳥が届けた
あえかなる乙女たちは
はじめてその黒曜の瞳を鏡に映し
そうして気づいた
わたしの涙はブルー・グレー
高貴なる色 知性の色
そうして彼女らは涙をぬぐい
月を棄て 歩きだした
サッフォの彗星の降る夜
あなたの墓前を訪ねる
この黒薔薇はあなたに相応しい
かつてブルー・グレーの涙を流した
黒曜の瞳の貴女に!
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