ゴシップが報じられないキューバで考えたこと
スマホでさりげなく目に入ってくる、ゴシップやスキャンダル報道。つい気になってしまいます。
メディアをにぎわす、眞子様の結婚問題を報じる記事を追いかけてしまったり。
芸能人の不倫報道を目にして、当事者でもないのに後味の悪さが残ったり。
大物俳優が薬物で逮捕されそうという「うわさ」レベルのニュースに首を突っ込んで、誰だかわからずもやもやして、読まなければよかったと悔やんでみたり。
それでも次から次へと、懲りもせず、興味を持ってしまうのは、「他人の不幸は蜜の味」のごとく、中毒性があるからなのでしょうか。
スマホの見過ぎで目をしょぼつかせながら、キューバは「ゴシップ報道がない」ということを思い出しました。
イエロー・ジャーナリズムをなくすために
キューバの主要メディアは共産党の機関紙「グランマ」をはじめ、政治や経済など、政府の方針に沿った内容が多いのが特徴です。いわゆる新聞の社会面にあたる、事故や事件などもよほど大きなものではないと報じられないとのこと。
こうした限られた報道のあり方には、賛否あると思いますが、キューバ革命(1959年)後の方針として、それ以前の社会にはびこっていた、米国による影響が強い「イエロー・ジャーナリズム」をなくそうとした側面もあったと、キューバの政府関係者が話していました。
イエロー・ジャーナリズムはゴシップやスキャンダルを含む、「消費者の欲望をあおる」ための低俗なニュースを表します。キューバのような社会主義のシステムでは、新聞・雑誌の売れ行きや、テレビ・ウェブ媒体の視聴者数が直接、経営ないしはメディアの存続に影響することもないため、ニュースをことさらセンセーショナルにすることもないのでしょう。
「ゴシップ報道がない」ことを知り、驚いたきっかけは、以前、キューバで「何度も離婚をする人が多い」というのは本当なのか、現地の人に聞いてみたことでした。
政治家や芸能人の不倫報道はない
首都ハバナに住む、30代男性がこんな話をしてくれました。
「職場の同僚で、パーティのたびに『妻です』と言って、違う女性を伴ってくる人がいる。『また違う人だ』と、みんな気づいているけれど、奥さんと離婚したのか、いわゆる愛人なのか、本人に突っ込むわけでもない。そうなんだ、みたいな感じで、とくに気にしない」
そんなおおらかさがある一方で、なかにはずっと奥さん一筋で「浮気なんて失うものが大きすぎて絶対にしない」と話していたキューバ人男性もいました。
あまりにも人によって結婚や離婚に対する見解が違うので、政治家や芸能人の私生活の不祥事、とくに「不倫」は社会でどう受け止められるのかとキューバの人に聞いたところ、そもそも「ゴシップ報道がない」ということがわかったのです。
私自身は日本のように「多様な情報の選択肢があるのはありがたい」とは思っているけれど、後味が悪くなるようなゴシップやスキャンダルは「そもそも目にすることがない」という前提のもとに、日々を過ごしてみるのもいいと思いました。
私たちの未来を考えるのに必要で大切なニュースがたくさんあるはず。そうした情報を得る時間を奪われないようにしたいなあと思います。