都会の孤独に寄り添う映画『ロボット・ドリームズ』
ふと窓の外をみたら、向かいのアパートで仲良く肩を寄せているカップルがみえた。寂しくなった主人公のドッグ(犬)は、友だちロボットを購入する。
物語はこんなふうにスタートする。ニューヨークが舞台のアニメーション映画『ロボット・ドリームズ』を観て、「わかるわ~」と膝を打ってしまった。
映画には、車のクラクションの音、やけに上手な地下鉄のミュージシャン、セントラルパークを疾走するランナーやスケーター、芋洗いビーチのコニーアイランドなど、「これぞニューヨーク」な場面があふれている。
キャラが濃ゆい動物たち
ジャズを中心に、ラテン(キューバ音楽!)やソウル、ロックなど、音楽がバラエティに富んでいるのも、ライブ会場がひしめくニューヨークらしい。
映画の登場人物は、ファッションやキャラが濃ゆい個性あふれる「動物たち」だが、世界から人が集まるニューヨークの多様性そのものだ。
多様性でいえば、米国随一のニューヨーク。みんなそれぞれ違いがある。刺激的な反面、だからこそ孤独を感じる場面もある。
わかち合えない孤独感
自分から働きかけなければ出会いのチャンスは生まれない。せっかく出会っても、文化が違えばなかなか相手を理解できない。
日々たくさんの人と接しながら「今、この瞬間に誰とも想いをわかちあえていない」と自覚しやすいのも、ニューヨークのような都会ならではだ。
だからこそ、誰かと寄り添いたい、ひとりではない時間を共有したい、という想いも強くなる。
互いの存在が大きくなる
映画ではドッグがロボットとかけがえのない時間を過ごすうちに、互いの存在が大きくなっていく。
この映画はセリフがない。シンプルな感情のやりとりが、表情や動作で繰り広げられる。
だからこそ、自分の感情を重ねやすいのだろう。ストーリーや音楽と一緒に、私も親愛の情が大きく育った。
笑って泣いて、最後はなんとも言い表せない心持ちになったこの映画、音楽好きな人にはとくにおすすめです。