My back pages
大洗からフェリーに乗って苫小牧まで来た。
昨年乗った北九州行きのフェリーとはまた違った趣があってよかった。その話はまた追々。
実は昔1年だけ水戸に住んでいたことがある。水戸市内の大学に1年だけ通わせてもらったけど、辞めて再受験して横浜に引っ越した。大洗の前にちょっと寄ってみようかと思い、行く前に色々と調べてみた。
勤めていたバイト先の中華料理屋は、もう検索で出てこなかった。茨城県内に系列の店舗がいくつかあってけっこう規模が大きかったのにな。
そんな店がなくなってしまったのだから、ジャズのサークルの先輩に連れてってもらった個人経営のたこ焼き屋さんなんて・・・
あった。
決して立派とは言えない生活をしていたので怖かった。実際足を踏み入れるとやっぱり色々思い出して「うわっ」ってなった。ノスタルジーなどを求めたのではなく怖いもの見たさ。
水戸駅からバスに乗って向かう途中、件の中華料理屋は建物ごとなくなっていた。ボーリング場もじゃんがらラーメンのお店も、一番利用していたスーパーもなくなっていた。
このたこ焼き屋すげえな。
今でこそ素敵な雰囲気だなとか、機材にこだわってそうだなとか、マイルスのポスターだとか、いい曲流れてるなとか、周りの情報をキャッチできるけど、当時ジャズどころか音楽なんて右も左もわからなくて、飲食店なんてどこに行っても自分たちの話しかしなくて周りが見えてなかった。
こんな素敵な店だったんだ。あとハイボール濃かった。良い。
ところで、「好き」ってなんだろうね。
当時ジャズが好きだったかと言えばたぶん違った。好きになりたかった。好きなものとか夢中になれるものが欲しかったけどよくわかんなかった。でもなんかジャズってかっこよくない?っていうただただミーハーな気持ち。何かに本当に好きで夢中になってる人が羨ましかった。好きなフリしてごめんなさい。
常磐線に乗ってMDウォークマンでKeith Jarrett の「My Back Pages」を聴きながら水戸を後にした。周りから著名なジャズマンや名曲を教えてもらった中で、この曲は本心で好きだった。
ペラッペラのBack Pagesを何か特別なものと、そしてこれから分厚くなると勘違いしてた私は、すごく長い時間電車に乗っていた感覚だった。
今回それ以来初めて水戸に降りて、「あれ?東京からこんなに近かったっけ?」って思った。そんなもん。