KAMU KANAZAWA 〜金沢の街中に散在する5つの現代アート美術館〜
伝統的イメージの金沢に、モダンな現代アートの美術館「KAMU KANAZAWA」が、2020年にオープンしました。
私設の美術館です。
KAMUは、金沢アートミュージアムの略称だと勘違いしていましたが、Ken Art Museumの略称でした。
若きアートコレクターであり、館長の林田堅太郎さんのお名前からです。
行こうとしては、なかなか行けず、ようやく巡ってきました。
そして、モダンなものができてうれしいとは思いながら、ついつい江戸時代と現代の地図で5つの美術館の場所を見てしまいます。
すべて犀川から金沢城よりの旧市街にあるのが分かります。
地図を見比べると、面白いように主な道筋がここ350年ほど変わっていません。
1番人気のKAMU Centerは、地図で1番左のところです。
金沢城に近いお堀の中の位置で、江戸時代には比較的大きな武士の家があった場所です。
今では、間口の狭いビルが建ち並んでいます。
右の並びを進むと、ビルが1棟、まるっと美術館になっていました。
KAMU Center
1階は、レアンドロ・エルリッヒの作品です。
部屋に入っていきます。
部屋の真ん中で、立って写真を撮るとこうなります。
まるで、エッシャーのだまし絵のようです。
金沢21世紀美術館のスイミングプールも、レアンドロ・エルリッヒの作品です。
これも、人の視覚の先入観を取り払う作品です。
近づいてみると、中に服を着た人がいます。
水は表面に少しだけで、地下通路を通っていくと、そこには空間があり、プールを下から眺められます。
2階へと階段を登ります。
1階の作品も階段だったせいか、階段が作品に見えてきます。
登っていくと、部屋の中に動物がたくさん見えてきます。
中に入ると、コンクリートに囲まれた森に入ったような感覚になります。
外の街路樹が見えるところは、なおさら森のようです。
階段の窓際にも、こっそりとねずみがいるので、この子にも会いましょう。
3階へ向かいます。
untitleのオブジェがあり、
奥のテーブルには、ポップな陶芸が。
鮮やかな色だけど、よく見ると伝統的な志野焼のゴツゴツした肌を思わせる作品もあります。
さらに、貫入(釉薬に入ったヒビ)のようなデザインも。
釉薬の滴がたれているイメージの作品も好みでした。
ずっと見ていても飽きませんが、次へ移動します。
KAMU k=k(=の上に・)
香林坊から片町へ向かう道は、北国街道で、周りには町屋が並んでいました。
今でも、ここはお店が並ぶ繁華街です。
歩いていくと、途中に脇へ入る小道があります。
PREGOです。
ここに、KAMU k=kがあります。
どんなアートかなぁとワクワク中へ入ると、真っ暗です。
恐る恐る進むと、足元がツルッと滑ります。
杉の葉が敷き詰められていました。さらに奥へと進みます。
神秘的です!
見た瞬間に、わたしは「世界木だ!」と強い世界観を感じました。
輪っかの内側へ入ります。
輪っかにも、木が映ってきれいです。
でも、木の真下には、さらにくっきりと映えていて、別の世界につながっているようです。
木のいい香りがすると思って聞いてみると、杉から抽出したアロマでした。
癒されます。
アロマのほかにも、杉の蒸留水もディフューザーで室内に漂っています。
蒸留水も匂いがするのかと近寄って嗅いでみると、甘い香りがしました。
中では、心落ちつく音もしています。
この音は、杉から蒸留水を作っているときの音とアーティストの心臓音だそうです。
後で解説を読むと、「TALISMAN in wood」は、循環がテーマです。
自然が都市を巡って、森は還され、わたしたちも巡り循環するとのイメージです。
循環している杉の成分を吸い込み、循環して重なる輪っかと杉の木のシルエットを見て、浄化される体験でした。
KAMU L
KAMU Lは、犀川から大野庄用水の流れるそばです。
この用水は金沢でも古く、一向衆の時代からあり、金沢城を作るときにその資材を運んだとも言われています。
この辺りは、下級武士の多く住むところでした。今では、飲み屋さんやホテルが立ち並びます。
このビルをくぐると、とおりゃんせKANAZAWA FOODLABOという屋台村があり、その一角にKAMU Lがあります。
中に入ると!
すごいインパクトです。1面の唇。
エアコンももちろん唇です。
森山大道さんという写真作家の作品で、都市の猥雑さや欲望を表しています。
カウンターには、森山さんの写真集に唇のボトルがあります。
どんなお酒か興味津々です。地元の福光屋さんのお酒でした。
でも、残念ながらリップバーは夜でないとお酒は飲めません。
※2月20日まで、石川県蔓延防止なので営業は要確認です。
パッと見ると、完全保護色で気が付きませんでしたが、別の冊子もテーブルに。
印象的な唇つながりでか、ダリの唇ソファを思い出しました。こちらは女優メイ・ウエストの唇からのインスピレーションです。
森山さんの作品のモデルは、どんな人なのかなと考えながら次へ。
KAMU tatami
竪町商店街通りを、少し入ったところにあります。
ここは、昔からの商店街で、江戸時代の地図を見ても、両側に町屋が並んでいます。
加賀藩祖の前田利家が金沢城周りの町を作ったあとで、1609年に竪町ほかいくつかの町名ができているので、400年以上の歴史があります。
ここから右に入ると、ビルの脇に古民家があり、そこがKAMU tatamiです。
玄関は、入って右に入口、左にはまた扉と変わっていると思ったら、もともと民宿だったということでした。
中のお部屋へ入ると、スクリーンいっぱいにに急須や湯呑みが映し出されています。
場所の名前でもあるtatamiに座って、しばらく眺めてみます。
方向もバラバラで、階層も錯綜しているように見えます。
あとで、あっ、セザンヌ!と思いました。
視点が、色々で上から見たものや横から見たものが一緒におさまっています。
入口の解説をみると、渡辺豪さんは、3DCGを使って、物質的、光学的な法則から離れた状態のアニメーションを作成している方でした。
KAMU Black Black
竪町商店街から、元北国街道へ向かって歩いていくと途中にあります。
Black Blackに入りましょう。
今回は、名前から予想していましたが、中に入ると真っ暗です。
足元を照らしてもらい、奥へ進んでいきます。
すると、音と光が!
ポスターのような瞬間もありました。
音の印象も強くて、まるで銃撃戦のような感じがしたり、宗教を感じたりしました。
決して放棄するわけではありませんが、これは「百聞は一見にしかず」で、体験をオススメします。
金沢の街歩きは、江戸を感じつつ、スタイリッシュなアートも楽しめます。
参考
KAMU KANAZAWA コレクション展パンフレット〜THE POWER OF THINGS〜
「金沢・町物語」