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『鍵のない夢を見る』
#note100本ノック
Day 62
この本を読みました。
辻村深月(2012) 『鍵のない夢を見る』.文藝春秋
もう読むのはやめようと思うのに、また辻村深月を読んでしまうのはなぜなんだ!
読後の率直な感想。
苦しい…。
ほらー、やっぱり。
行動の意図の奥
この本は人間の行動の意図の奥にあるもの、できれば見たくないと思うもの、しかし確実に存在しているものが言語化されているように思いました。
5篇から成り立っており、それぞれちがう人物が描写されていますが、どれも全く
もって自分の周りにふと存在していそうな不気味さをまとっていて苦しくなります。
「仁志野町の泥棒」
この話のミチルの葛藤は、自分も味わったことがあるように思いました。
みんながスルーできることをスルーできないミチルの姿に、
わたしだけじゃなかった
と安堵感すら覚えた。笑
しかしその気持ちに正直に生きると、こんなことが起きるのよほんとに。清々しさと苦々しさを織り交ぜたような読後感でした。
「石蕗南地区の放火」
この話は、人間の不安や心地よくない想いが生み出しそうな現実と徒労を、秀逸に描き出していると感心しました。
でももう一度読みたいとは思わない…。苦しい。
「芹葉大学の夢と殺人」
いちばん苦しいと感じた話はこちら。
雄大の夢を語る姿、あまりにも無自覚に未玖を傷つける様子は、どこかで感じたことがあるような、なまぬるい温度とともに心のなかに流れ込んできました。
正直、途中で読むのをやめようかとも思うくらいでした。
この章で思い出したのは、
悪気がないのがいちばん厄介
という教訓めいた事実です。
この「雄大」の思考パターンをどこかで知っている…と気づき、思い出したのが『凍りのくじら』の若尾。
辻村美月( 2008 )『凍りのくじら』.講談社文庫
わ…、同じ作者でした。辻村深月さん、こういう人物を描かせたら神レベルですね。
人間の本性や真実
言葉を選ばすに表現すれば、この本は「エグい」。
わたしはそれを客観視できないというか、どうも登場人物にシンクロして読もうとしてしまう読者なので、彼女の作品は今のところ、総じて苦しいです。
ということで、この作品を読み返すことはないと思いますが、この本が直木賞に選ばれたことは理解できる気がします。それくらい、人間の本性や真実を描いているように思える。
例えば、この「鍵のない夢を見る」というタイトルを回収できるような気づきを、わたしは本編から見つけることができませんでしたが、一刻も早くこの本の世界観から離れたい気がする。それほどに、目を背けたい人間の本質が描かれているのかも。
ループにハマる前に、考えることを止めようと思います。