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「言葉の温度」

あなたが日々何気なく発する一言の、「言葉の温度」は何度ですか?

表紙をめくるとこんな一行から始まる言葉への愛が詰まったエッセイです。

日常の中で私達が出会う様々な言葉を丁寧にすくいあげ、それを軸に展開される人間関係のドラマを描いて行く。


《感想》

著者の言葉がとても繊細なのが印象的。

「繊細なものは美しい。そしてデリケートです」と最初の1ページに書かれています。

「言葉にはそれぞれ温度があります。温もりのある言葉は、悲しみを包み込んでくれます。生活に疲れた時、ある人は本を読んで作家が投げかける文章から慰めを得ます。

溶鉱炉の様に熱い言葉には、感情がぎっしり詰まっています。それを口にする人は気持ちがすっきりするかも知れませんが、聞く人の心にやけどを負わせることもあります。」

何気なく口にした一言のせいで大切な人が去ってしまったり、心を閉ざしてたのなら、言葉の温度があまりにも熱かったのではないか。
(または文章の温度が冷たすぎたか・・・)
自分の経験と重ね合わせ、言葉の持つ大切さな意味と切実さを確かめながら読み進めると、自分の言葉の温度を確かめるきっかけになるのでは?

私が特に印象に残った箇所をシェアします。

自分を知ること、それが愛?

「人は恋に落ちると、荒涼とした砂漠でヤシの木でも見つけたように、見境なく突進する。その木のことを、相手のことをもっと知りたくて一目散に飛びついていく。ところが二人だけのドラチックな旅が大円団を迎えて幕を下ろした瞬間、冷え冷えとした真理に気づくことになる。
これもまた愛のほろ苦い一面と言えるだろう。
最初は「相手」を知りたくて始まるが、結局「自分」を知ることになるのも、ひょっとしたらそれが愛なのかもしれない。」

自分だけの道を探す

「あきらめ」というのは、悲しい単語だ。辞典を見ると「あきらめ」の定義はこうだ。「希望を捨てて完全に断念すること」

探検家たちはよくこんな話をする。
「遭難した人が助からないのは、食糧不足や体力低下が原因ではありません。希望をなくした瞬間に気力がくじけるからです。あきらめは生きる意志までくじくのです。」

「人は誰でも、胸の中に楽園を抱いて生きて行く。私達はそれを夢と呼ぶ。
楽園に到達したいなら、まずは出発しなくてはならない。どうやって?
好奇心という船に乗り、自ら問いを投げかけ、自分だけの道を探すしかない。」

刻む、文、恋しさ

「恋しさを抱かずに生きる人はいない。結ばれない縁に対する心残り、天に見送った父母や子供を思う切ない気持ち、決して戻る事のできない過去への郷愁といったものは、心のなかのあまりにも深い場所に刻まれており、取り除くことはできない。
癒えることのない恋しさは、胸の奥からにじみ出す。
そのうち恋しさが高じると、私達は一条の涙を拭いながら、日記のような秘密の文章を書いたり、本の片隅に落書きを書き散らしたりする。
そうでもして、溢れる恋しさをぶちまけるしかない。そうしなければ、耐えられないから・・・。」

誰かにとって、かけがえのない人

お手洗いの壁に貼られていた言葉

「トイレをきれいに使って下さい。
ここを掃除してくださる方たちは
誰かにとって、かけがえのない人たちです。」

最後に一番ぐっと来たストーリーを!【男が海に飛び込む理由】

2011年3月11日の東日本大震災で行方不明になった妻を探すため、還暦近い男性が潜水士の資格を取得し、2年以上も海に飛び込んでいる。

妻が働いていた宮城県の銀行では、多くの方が行方不明になった。
後に発見された彼女の携帯電話には、夫に届かなかったメールが残されていた。「津波凄い」「帰りたい」

メールを見た夫は胸が張り裂ける思いだった。彼は妻が行方不明になった後、銀行に近寄ることもできなかった。どこからか助けてと泣き叫ぶ彼女の声が幻聴のように聞こえてくるからだ。

彼は妻の亡きがらだけでも探したかった。海上保安庁の手助けを得て、妻の同僚たちの遺体が見つかった地域を中心に捜索活動を行ったが、妻の痕跡は見つけ出す事ができなかった。
結局、自分が海に入る事にした。
還暦を前にした彼は、今日も海に潜る。そして心に誓う。海のなかのどこかにいる妻を必ず探し出して、家に連れ帰ると。

「愛は時には無力だ。愛は人を幸せにするどころか、かえって愛のせいで苦痛の日々を送らねばならない場合も多い。
ただ、愛はコインの両面のような性格を持っている。人を絶望のどん底に突き落とすこともあるし、その絶望からすくい上げてくれるのもまた、愛という命綱であることは否定出来ない。
人を破壊しない愛は、人を強くしてくれる。愛の価値を否定出来ない理由も、ここにあるのではないか。」

皆さんの心に響いた言葉はありましたでしょうか。

最後までお読み頂きありがとうございました。


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