『落下の解剖学』 ANATOMY OF A FALL
久しぶりに、どれくらいの人が見てくれているのかな、というのと、感想を書き留めておかないと何もかも綺麗さっぱり清々しいまでに忘れていく、というのもあって、「読んだり観たり」を更新してみることに。
『落下の解剖学』を、(オウチスキーなのでプロジェクターで居間の壁に映し、ソファーでくつろいで)観た。2023年 ジュスティーヌ・トリエ監督。おお〜これは観る人の人生経験や普段の問題意識や引っかかりとその感度によって読み取るものが全然違ってくるやつ。私はドイツ語が母語の妻とフランス語が母語の夫が間をとってどちらの第一言語でもない英語で話している、裁判でも被告の第一言語でないフランス語と英語でやりとりしている、というだけで、もうキューってなりました。これだけ流暢に使いこなせても、いろんなものが薄いヴェールに包まれるし、与える印象もどう転ぶかわからない。おそらく不利に働きそう。それだけじゃないけど、全編、ああ〜〜、わかる〜〜わからんけどわかる〜〜ってなるやつでした。(伝われ)
ところで夫が大音量でかけていたミソジニスティックな曲ってどんな歌詞なんだろう?※
<以下ややネタバレあり>
証人である息子、ダニエルの証言に影響を与えないよう、裁判所から派遣された監視人のマージがダニエルに「決めないといけない」って言ったところが私には一番の山場で、え?今 decide って言った?と巻き戻してもう一回確認してしまいました。(オウチ鑑賞だからできるワザ)。影響を与えてはいけない人が、そんなことを言うの?という驚きと、そうだよね、母も父も両方好きだったのなら、もういない父と残った母、今後の自分の人生を考えたらそれは難しい選択ではないよね。でも私がダニエルの立場だったら全然そこに気づかないかも、とも思ったり。
あ、あとテープの手触りを間違えた、っていうのは、ダニエルの言っていることの確からしさが揺らいだ、という以上の意味はなかったのかな?そこは見返しても(そこも巻き戻した)よくわかりませんでした。
面白かった。★★★★☆
4月7日追記
※ミソジニスティックな曲、50 Cent というアメリカンラッパーの“P.I.M.P”という曲のアコースティックヴァージョンだそうな。
歌詞見てなるほどこりゃ示唆的だわ。となりました。(「あのビッチはオレからビタ一文とれないぜ」みたいな。)
なお、この映画において「真実」がわからないままである点は私は全く気にならなくて(何を信じるかは自分が選び、決めることだとマージが明言しているし)、ジェンダーロールの反転とそれに対するバックラッシュみたいなところをジワジワ巧みに描いたのがこの映画の肝だと思ってます。(念のため)
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