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永劫回帰

彼は何度目の秋を迎えただろう

今頃、夏が抜け出る時になると必ず秋の虫が鳴く

彼には来世はなかった、来ないのだった

彼は死ぬことも無く、老いることも病も無い

彼の生命は今の所、永劫続いている

彼はその事を虚しいと捉えていた

誰も彼と生を共に出来るものなど

居無いからだ

彼は寂しく秋を迎えただろう

侘しく虫の声を聞いただろう

いや、秋だけでなく四季の全てを

星は円を描いて巡り、元の場所へと戻る

彼の一生も円を描いて元の場所へ戻り、再び始まる

誰か彼と生を共に出来る人は無いだろうか

秋の夜空に瞬く星さえ

見慣れ過ぎたものだった

秋の夜空に流れる星さえ

見慣れ過ぎたものだった

彼は誰も待つことも無い時の流れを

進むようでいても

結局は元の場所へと帰るのだ