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「映画館」でこそ味わえる臨場感~『ツイスターズ』感想(ネタバレあり)〜

(以下、『ツイスターズ』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレがあります。ご注意ください。)


まず、「女性が主人公」ということに対して、非常に誠実な作品だと感じました。劇中でタイラーが記者に向かって「彼女(ケイト)の記事を書け。」と言うところが象徴するように、ケイトが映画の主人公であることが徹底されており、男性の登場人物たちがそれを一切邪魔しません。主要キャラクターの一人であるタイラーは、演じるグレン・パウエルの力もあって魅力的なキャラクターではありますが、主人公の見せ場を食うことはなく、ケイトのメンターとしての役割に徹しています。ラストのシーケンスでも、タイラーたちが手助けすることなく、ケイトは自分自身の力だけで竜巻に立ち向かっていきます。

また、本作の(ディザスター映画としての)特異な点は、映画全体の「ゴール」を「人命救助」に置いていないところだと思います。ディザスター映画では、「災害から人命を守る」ことを「ゴール」にして物語を推進させていくのが王道の流れです。例えば『タワーリング・インフェルノ』では「火災が起こった高層ビルから人々を救助する」というように。しかし今作では、その「人命救助」を物語の推進力にはしていないように見えます。
確かに、「竜巻による被害から人命を守る」というのは、登場人物たちの大きな目標として存在します。しかし、その中身は映画の中で、「台風の研究を成功させて、将来的に被害を防ぐ」というものから、クライマックスで急に「今そこにいる人命を救う」という目的に変わっていってしまうなど、非常に曖昧なものです。
それよりも、本作が焦点を当てているのは、主人公ケイトの「罪悪感から脱け出して、自分を取り戻す」というテーマであり、これこそが物語全体の大きな推進力になっています。映画全体に「ケイトの心の葛藤と成長」という筋が一本しっかりと通っているために、観客が感情移入して、映画の最初から最後まで惹きつけられるのです。

さらに、「車に乗って竜巻を追跡する。翌日また、別の竜巻を追う。翌々日また、別の竜巻を・・・」というストーリーの構造も、パニック映画というよりも、主人公たちが旅を通じて成長していくロードムービーのようで、この映画ならではの味わいを生んでいました。

全編大スクリーンで堪能すべき場面の連続、特にラストのシーケンスは、「映画館」で鑑賞してこそ臨場感を味わえるものなので、「いつか配信で」と思わずに、今すぐ劇場に足を運んで欲しいと思える一作でした。

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