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作り手の衝動を感じる映画~『モンキーマン』感想(ネタバレなし)〜

(以下、映画『モンキーマン』の感想ですが、物語の核心に迫るようなネタバレはありません。ただし、映画に関する情報を出来るだけ入れないで鑑賞したいという方はご注意ください。)


デヴ・パテルが俳優としてだけではなく、監督・ストーリーテラーとしての才能を全世界に見せつけた、素晴らしいアクション超大作でした。

杉作J太郎さんが監督した映画を観た時に、「映画を撮りたい!」という凄まじい熱量を感じて感動した記憶があるのですが、本作でも似たような感覚に陥りました。デヴ・パテルがアクション映画をどうしようもなく愛していて、「この映画を作らなくちゃならないんだ!」と突き動かされるような衝動で映画を製作していることが、今作を見ているとビシビシと伝わってきます。技術の巧拙とは関係なく、作り手の思い入れというものは、不思議と見ている人に分かってしまうのだということを再確認しました。

『燃えよドラゴン』を思わせる「鏡の部屋」や、タワーの上へ行くほど強い敵がいる『死亡遊戯』的構造、『ジョン・ウィック』への目配せなど、歴代のアクション映画へのリスペクトをこめつつ、「俺もブルース・リーになりたい!」という純粋な気持ちを一切隠そうとしない姿勢にも大変好感が持てます。また、過去の作品にオマージュをささげつつも、単なる焼き直しではなく、ハヌマーンなどの神話の要素、タブラを叩く音に合わせた訓練シーンや、ヒジュラと呼ばれる人々の連帯など、インドの文化を織り込んで独自の色を出しているのも魅力的でした。マイノリティへの差別や格差社会への怒りを真っすぐに訴えたストーリーも、胸に迫ります。

デヴ・パテルの次回監督作品が、今からとても楽しみです。

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