【経験者は分かる】「ありがとう」がバターのように心に染みる
グランドをしていた時に気づいたことは、「ありがとう」の暖かさ。
「ありがとう」と言われると、そのあとの仕事も頑張れます。
でも、悲しいかな、グランドスタッフが仕事をして、「ありがとう」と言われることは少ないのです。
例えば、前の便の到着が遅れて、乗り継ぎの便にぎりぎり乗れたお客さんがいるとしましょう。
到着のゲートから、次の出発のゲートまで、お客さんと一緒に走るのは、グランドスタッフです。アテンドをしても、急いでいるので、それどころではなく、お客様からのお礼はありません。
そして、だいたいのお客さんは機内に着いてすぐ、「預け入れの荷物が、同じ便にちゃんと載っているかの確認」を、クルーに依頼します。
クルーは「お客さんから、荷物の搭載に関して質問があったから、調べて」と、グランドスタッフに伝えるだけで、実際に何かをするわけではありません。
お客様の荷物を、次の便へ載せてくれるように必死で頼むのも、グランドがやります。そして、搭載されているかどうかを確認するのも、グランドスタッフです。※これは、私たちの業務外のことでしたが、私が働いていた時は積極的に確認していました。しかし、私たちがどれだけ頑張っても、搭載が間に合わないことは、もちろんあります。
そして、搭載されていることが分かれば、お客さんにその旨を伝えます。
「ありがとう。」
お客さんがそう伝えるのは、裏方でいろいろやってくれたグランドスタッフにではありません。伝達係の、クルーに対してのみです。
もし、荷物が搭載されていなかったら、クルーは「到着したら、グランドスタッフに相談してください」と伝えるのみ。
そして到着地に着いて、お客さんは「乗り継ぎでは走らされて、疲れた上に、荷物が届いてないなんて!」とグランドスタッフに怒りをぶつけます。
なんて損な役回りなんでしょう。お客さんのために、策をめぐらせているのに、全然感謝されないなんて!
いや、もちろん、クルーの仕事には、グランドとはまた別の大変さがあるんです。グランドと同じように、お叱りを受けることもたくさんあると思います。私はここで、仕事に優劣をつけているわけではありませんよ💦
でも、グランドスタッフに「ありがとう」が届きにくいのは、事実です。
だから私は、どんな小さなことに対しても、誰かに何かしてもらったら、「ありがとう」と絶対に言うようにしています。
そして、「ありがとう」と言われるべき人が、その言葉をちゃんともらえるように、状況をちゃんと理解するようにもしています。
人間関係において、私がとても大切にしていることです。
私が経験した「ありがとう」と言われない悲しさを、周りの人が味わわないよう、自分なりに努力しているのです。
思いがけず「ありがとう」と言ってもらえると、本当に嬉しいものです。暖かい食パンの上のバターがゆっくりと溶けるように、私の殺伐とした心も溶けていくようです。
言いすぎることはないと思うので、これからもどんどん「ありがとう」と言いたいものです。