初めて人に裏切られた日。それが人生の転機となった。
それは、高校1年生の頃。
中学時代、志望校に合格するため必死に勉強してきたわたし。
晴れて高校に合格すると、その反動からか「とにかく遊びたい!」という気持ちが強くなった。
入学早々、スカートの丈を短くし、いわゆる“ギャル風”の見た目になった。
部活はというと、中学校のバレー部でアタックNo.1並みにしごかれた為、もうそうゆうのはお腹いっぱいだった。そのため「一生懸命やらなくてもいいもの」を基準に選んだ。
そんな中、登下校で毎日同じ電車に乗る同じ高校の子に気がついた。その子もわたしと同じくスカートが短く、派手な見た目。
話したことはなかったけれど、なんとなく「似てるな」と感じていた。
何ヶ月かして、どういうきっかけだったのかは覚えていないけれど、その子と話すようになった。
親友ってわけじゃない、遊び仲間。
そんな距離感だった。
気づけば学校に一緒に行くようになり、放課後にはプリクラを撮ったり、一緒に遊んだりする毎日が始まった。
その子は部活には入っていなかったが、わたしはバイトをして、好きなものを買うお金を稼いでいた。
高校2年生。
進学校だったわたしの高校では、高2から本格的に大学受験モードに入る子が増え始めた。
毎日バイトだったのでこれまでの成績はあまり良くなかったが、これからは切り替えて頑張らねば、そう思ってた。
朝早く学校に行ったり、放課後は図書館で勉強したりしていたため、友達とは登下校が重なることも少なくなった。
そして、秋のある日。久しぶりに同じ電車に乗り合わせたわたしたちは、久々に話をした。
「わたし、指定校推薦で慶應決まった」
え…?
一瞬、頭が真っ白になった。
あんなに一緒に遊んでいたのに?
いつも「成績やばい〜」って笑っていたのに?
その子の言葉が信じられなかった。
「成績やばい〜」なんて、ただのカッコつけだったんだ。
その子は家ではきっと、わたしが想像もしなかったくらい勉強していたのだ。
バイトもせず、しっかりと未来に向けた準備をしていた。
一方のわたしは、遊び呆けた挙句、バイトで稼いだお金を好きなものに使い、ただその日その日を過ごしていた。
目の前の彼女は、全然違う次元にいた。
わたしの胸に湧き上がった感情は「裏切られた」という思いだった。もちろん、大人になった今振り返れば、これが裏切りなんてことはない。むしろ、わたしが勝手に「同じだ」と思い込んでいただけなのだ。
でも、当時のわたしにはその違いがショックだった。同じ土俵で相撲を取っていると思っていたのに、気がついたら彼女は全く別の世界にいた。
その事実を目の当たりにし、初めて「自分と他人の努力や価値観の違い」を思い知らされた。
悔しかった。
心の中で何度も何度も「負けたくない」と思った。そこから、わたしは大学受験に向けて本気で努力を始めたのだ。
朝誰もいない学校に行き自習室1番で勉強。
放課後も図書館に通い、問題集を解きまくる。
それまでの自分の怠慢を取り戻すため、必死になった。
結果、無事に第一志望校に合格することができた。
自信を持って家族や親戚、友人に報告することができた。
あの時、「裏切られた」と感じた瞬間がなければ、きっと今のわたしはいないと思う。もちろん、その子が悪いわけではない。
むしろ、彼女は自分の人生を真剣に考え、努力を続けていただけだ。裏切られたのは、他でもない「自分の甘さ」に対してだったのだ。
でも、あの悔しさがあったからこそ、わたしは本気で努力することの意味を知ることができた。
この経験から学んだことは、表面だけで人を判断しないこと。そして、未来を切り開くのは、自分自身の努力しかないということだ。
今でも、ふとあの時のことを思い出す。高校時代、初めて「人に裏切られた」と感じた日。それは、わたしにとって人生のターニングポイントになった日でもある。