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パワハラ上司と会社に行けなくなった日の話。
できれば二度と思い出したくない経験だ。
最初に入った会社で出会った上司は、いわゆるパワハラの権化だった。
「ハラスメント」なんて横文字で表現しちゃって、
あれはそんな軽い言葉で表現できるほど生易しいものじゃない。
正直に言えば、人を殺す行為だ。
追い詰め、痛めつけ、どこまでも孤立させる。
それは人間の尊厳を踏みにじる暴力だ。
その上司は私の人格だけでなく、
家族や友人まで否定し続けた。
業務とは無関係に何時間も拘束され、
ひたすら罵倒される日々。
なぜ私が標的になったのか、今もわからないが、
上司が私に依存していたのだと今になって思う。
自分の不機嫌や八つ当たりの捌け口として、
私を選んでいたのだろう。
あるとき異動を命じられた彼女は、
主任だった私を一緒に異動先へ連れて行こうとすらした。
「自分の手足」扱いだ。
誰が行くか、ばかばかしい。頭悪いの?
と呆れた記憶が今でもはっきり残っている。
そんな上司を、ここではUと呼ぼう。
名前をつける価値もないけど。
ある日の夜中、もうどうしようもなくなった。
Uに連絡を取って翌日休む許可を得ようと決めた。
電話する勇気など当然なく、
怖さに震えながらメールを送るしかなかった。
自分の体調不良を理由にすると逆に怒られかねないので、
母の体調が悪く病院に付き添う必要がある、という言い訳を考えた。
母ちゃんごめん。
体が震え、指もかすかに震えた。
メールが届いたとわかっても返事はなかった。
ああ、これはもう、怒っているな、と直感した。
冷静に振り返ると、この上司はずる賢い人間だった。
メールに応じてしまうと証拠が残る。
それがわかっているから、
メールを無視して自分の不在の責任を問える余地を残していたのだろう。
返事がないのだ。
来いということだ。
行かなければ、と思っても、
体が言うことを聞かなかった。
電車に乗ることすらできなかった。
足がすくんで、一歩も動けなかったのだ。
結局、心を決めてUに電話することにした。
息が震え、体も冷えた。
電話口に現れたUの不機嫌そうな声を聞いた瞬間、恐怖は倍増した。
「すみません、母が急に体調を崩して病院に行かなきゃいけなくて…」
そう言うと、Uは信じられないほど冷たい声でこう言った。
「それを私に聞くことですか?聞くべきことですか?」
ああ、この人に何を言っても無駄だ、
と改めて感じた。
「いえ、申し訳ございません。休みます」と告げると、ため息をつかれたまま電話を切られた。
電話を切ると、不思議と涙がこぼれた。
恐怖からか、少しの安心からか、
涙の理由は自分でもわからない。
でも、こんなふうに自分を守る行動を取れたのは初めてで、
少しだけ自分を取り戻した気がした。
どうせ翌日にはまた怒鳴られるだろうし、
理不尽な罵倒が繰り返されることもわかっていた。
でも、今日は行かなくていい。
それだけが救いだった。
その後、私のパワハラが社内で告発され、
Uは異動させられることになった。
私のことを見ていた他の社員が、
私の心が壊れてしまうと感じてくれたらしい。
信じられなかった。
ずっと会社など信用していなかったし、
私から声を上げれば、
逆にもっと酷い仕打ちを受けると怖れていたからだ。
だが、その勇気ある行動のおかげで、一歩前へ進むことができた。
今、どこかで働きながら同じように苦しんでいる誰かに、伝えたいことがある。
あなたの心は、あなた自身のためのもの。
他の誰かに壊されていいものではない。
あなたの強さや優しさを、そんな価値のない上司や同僚に使わないでほしい。
誰かに使い果たされるためのものじゃない。
強さも、優しさも、本来は守りたいものを守るためにある。
あなたは、それでもやっぱり明日も会社に行こうとするかもしれない。
きっと、その強い責任感や、あなた自身のまっすぐな性格がそうさせるんだと思う。
だけど、それでもどうか、自分を大切にしてほしい。
行く先にある大切な未来も、守るべき自分自身も、すべてあなたの価値ある人生のためにある。
どうか忘れないでほしい。
あなたはかけがえのない存在だということ。
誰かに依存されるために生きているわけではなく、
自分の人生を大切にするために生きているということを。
あなたには、価値がある。生きる意味が、たくさんある。