鶯谷カルチャーマガジン「うぐいす」vol.2
知れば文化、知らねば民家。
鶯谷カルチャーマガジン「うぐいす」vol.2
今回は、鶯谷駅から徒歩3分の場所にあるホテル
LANDABOUT TOKYOに注目してみました!
ここでは、街のさまざまな場所で配布されているZINEの内容を
オンラインでも沢山の方に読んでいただきたく、インタビュー部分を抜粋してお届けしています。
今回は、LANDABOUT TOKYO支配人
濵田光紀さんにお話を伺いました。
ホステルスタッフ時代の縁で、
「ランダバウト」の支配人に。
ー濵田さんのご出身は?
「出身は神戸ですが、小学校の頃に父親の転勤で千葉へ引っ越しました。それからはずっと千葉で暮らしていたのですが、都内の国際高校に入学したのを機に海外に関心を持つようになりました」
ーどこかへ留学されたんですか?
「二ヶ月くらいなのですが、アメリカのテネシー州へ留学に行きました。アメリカの文化が好きだったので、洋楽にドハマりしてしまい(笑)。その際に英語を覚えたので、ふわっと『英語を使う仕事に就きたい』と考えるようになりました。だから、高校卒業後に英語の専門学校へ入学して、英語とビジネスを学びつつ就職活動をしました」
ーそして、今お勤めの「ベステイト」に入社されたというわけですか?
「はじめはアパレルメーカーに新卒で入ったのですが、一年半くらいで退職しました。それからは、シェアハウスやホステルなどの事業をやっている会社でアルバイトしていました。バックパッカーが泊まるようなホステルのフロントスタッフ業ですね」
ーそこは海外のお客様が多かったんですか?
「そうですね。それがすごく楽しくて今につながっていますし、じつはそこで「ベステイト」の代表と、創業メンバーの一人の女性に出会ったんです。弊社の代表はその頃から『自分の宿をやりたい』という夢を持っていて、『一緒にやろう』と話していました。そのために広島へ物件を見に行ったりもしていました。そうこうしていたら縁があり、一店舗目として福岡の博多でホテル&レジデンス形式の宿泊施設を運営できることになったんです。私はそこに二年くらい在籍して福岡にいながら、東京の『ランダバウト』の支配人としても、毎月の定例会などに参加してオープンの準備を進めていました」
鶯谷のイメージを落とし込んだ、
“普通じゃない”ホテルデザイン。
ー「ランダバウト」の計画には、いつ頃から参加されていたんですか?
「初期段階からですね。フロントのデザインをどんな風にするかなど、建物のハード面にもアイディアを出したり、オペレーション面から運営しやすい造りとはどういうものなのかを話し合ったりしていました」
ー可愛いですよね、フロントのデザイン。
「ありがとうございます。『普通の受付だとつまらないよねー』と試行錯誤した甲斐がありますね。」
ーここの緑の部分は、もしかして鶯谷にある橋の緑ですか?
「まさにそうなんです! 鶯谷駅の南口から歩いていくと、橋がありますよね。あの柵の色に合わせて作りました。デザイナーさんのアイディアで、鶯谷らしいカラーを随所に落とし込んだんです」
ーこちらのピンクもどこかにイメージソースが?
「おそらく、鶯谷のラブホ街からだと思います」
ーそうなんですね! 話は変わりますが、ここのホテルをオープンされた頃はちょうどインバウンド需要が高まっていた時ですよね。東京へ来られる前と後で印象の違いはありましたか?
「僕自身はもともと東京のホステルで働いていたので、インバウンドのお客様が多いということは肌で感じていたのですが、面白いことにホテルの場所で国籍や層が全然違うんです。たとえば、中国や韓国などアジア圏の方にはそもそもバックパッカーという文化がないですよね。だから、いわゆるゲストハウスやホステルのような安宿にはあまり泊まらないという傾向があります。とくにこの辺りには台湾やタイの宿泊者の方が多いかもしれません。上野公園が近いこともあって、花見の時期に利用される方が多いですね。福岡の方では、日本人よりも韓国人のお客様が多かった印象があります」
ーそれは立地的な理由ですか?
「そうかもしれません。博多から韓国釜山まで船で行き来できるくらい近いこともあって、やはり当時は韓国のお客様は圧倒的に多かったですね。」
鶯谷の街との交流を大切に考える、
近所の方にも愛される場所づくり。
ー福岡から来ていた時と移住してからで、鶯谷の印象は変わりましたか?
「はじめは、東京の下町なので新しいホテルは受け入れられないのではないかと心配していました。昔からの老舗店も多いので、こんなに大きな建物には拒否反応を示されるんじゃないかって……。でも、実際にはそんなことはありませんでした。色々なお店にパンフレットやショップカードを持って挨拶へ行ったのですが、快く『一緒に盛り上げて行こう』と受け入れていただけました。本当に居心地が良い街だなと思います」
ー渋谷や新宿のような大きな街と違い、街の人の顔をしっかり見ることができるのは良いところですよね。
「そうですね。何度か近隣説明会に参加したのですが、この街に住んでいる方にとっては、ホテルの影響でインバウンドのお客様がたくさん来ることに不安を感じている方も多かったんです。たとえば、大型バスが停まって通学路のジャマになるとか、マナーの悪い人が増えて風紀が乱れるんじゃないかとか。実際に反対派の方もいたのですが、オープン前に試泊会を開いて近隣の方を招待したり、レストランでの屋台イベントなどを開いたり、毎日周辺のゴミ拾いを行っているうちに、次第に近所の方との距離も縮まってきているんではないかなと思います。」
ーマルシェもやられていますよね。イベントはどのくらいの頻度でされているんですか?
「月に一度、レストランの軒先でマルシェや屋台を開いています。レストランの運営会社の方々が運営してくれているのですが、地域の方々との交流は今後も大切にしていきたいと思っています」
鶯谷の入りにくい名店を探訪する、
外向人向けのツアーを企画。
ー「ランダバウト」では、街を案内するサービスもされていますよね。
「コロナの影響で一旦ストップしていますが、一回だけ鶯谷のツアーを開催したことがあります。海外の方にとって入りにくいお店ってあるじゃないですか。たとえば、メニューが日本語しか書いてなかったり、入るのに勇気がいるような佇まいであったり。せっかくなら、そういうローカルなお店も楽しんで欲しいという思いで、うちのスタッフがお客様を案内するというサービスを実験的にやってみたんです。一緒に居酒屋へ行ってお酒を飲むみたいなことですが(笑)。また世の中の状況が落ち着いたタイミングで再開したいとは思っています」
ーこの辺りには下町感のあるお店が多いので、たしかに日本人でも入るのにとまどってしまうお店もありますよね(笑)。濱田さんのおすすめのお店はありますか?
「歌謡曲カフェ『ラバーズ』さんやスナック『よーかんちゃん』さんですかね」
ー「よーかんちゃん」さんには何度か行きました。紹介制でしか入れないお店ですよね!
「じつは、僕はまだ行けてなくて(笑)。「ランダバウト」の開発メンバーで街を捜索している時に行ったらしいのですが、その時僕はまだ福岡にいまして。紹介じゃなくても入れたと言っていましたよ」
ー私、行くまでは派手なスナックだと思っていたのですが、じつは「よーかんちゃん」というおじいちゃんのショーを見るスナックで……(笑)。歌って踊って、しかも全部オリジナルソングでした」
「まさにエンターテイナーですね(笑)」
ー鶯谷で一番濃い店かもしれません(笑)。
鶯谷を知るきっかけとなり、
新たな客層の獲得に貢献。
「『ラバーズ』さんの方はオープン後に来てくれたんですよ。うちができてから若いお客さんが増えたと喜ばれていました」
ー言われてみれば、先日ここへ来た時にたくさんの若いインスタ女子やインスタ男子を見かけました。
「都内に住んでいる方で『鶯谷駅なんて初めて降りた』みたいな方がたくさん来てくださっているのはうれしいことですね」
ー鶯谷が山手線上にあるということすら知らない方も結構いますよね。「ランダバウト」はオシャレなホテルなのでWEBでも話題になっていますが、まさか鶯谷にあると知っている人は少ないかもしれないです。
「じつはそうなんです(笑)」
ーここへ宿泊した際に、何軒か近くで寄れるお店があると良いですよね。
「そうですね。『LANDABOUTおひとりステイ』という宿泊プランを昨年に期間限定で販売したのですが、SNSのコメントで『鶯谷って怖いイメージがあるんですが、夜に一人で歩いても大丈夫なんですか?』と聞かれました。実際は意外と安全な街なんですけどね」
ーたしかに、20代前半の女性はラブホテル街を一人で歩くことに抵抗があるかもしれませんね(笑)。そもそもこの場所に決めたのはなぜだったんですか?
「もともとここには銀行があったんです。それが移転することになり、今のオーナー会社さんがここを買い取りました。今まで銀行として地域の方々が足を運んでいた土地だったということもあり、「地域のためになる場所にしてほしい」という思いを受け継ぎ、そこからホテルプロジェクトが始まり、私たちはホテルの運営会社としてオーナー会社からお話をいただきました。
お客様とのつながりを大切にし、
東京一勧めたくなるホテルを目指す。
ー運営するうえで、大切にしていることはありますか?
「スタッフの接客に重きを置いています。お辞儀の角度が決まっているようなカッチリしたホテルではないので、どちらかと言うとフレンドリーでアットホームな雰囲気が出るように心がけています。お客様と世間話をしますし、チェックイン時にもただ館内の説明をするのではなく、街の情報を紹介することもありますよ」
ー宿泊しても街のことはガイドブックやウェブで調べることが多いですよね。ホテルの方から、「ここが良いよ」っておすすめしてくれるのは良いですよね。
「そういったスタイルでお客様と密に関わっていきたいと思っていますし、それが会社として大切にしていることなんです。お客様と仲良くなり過ぎて一緒に飲みにいくこともありますよ(笑)」
ーすごいですね(笑)。まさに濵田さんが以前働かれていたゲストハウスのようなマインドですね。
「その時の経験が今にずっとつながっているという感覚はあります。僕が福岡へいた時も会いに来てくれたお客様がいて、とてもうれしかったですね。これからも、そういったつながりを大切にしていきたいと思っています」
ー今後はどんなことにチャレンジしていきたいですか?
「ホテルという業態に捉われず、やれることは何でもやりたいと思っています。レストランにはステージがあるので、たとえば音楽やアートなどのイベント、映画会とかはやりたいと思っています。東京で一番お客様が友達や家族におすすめしたくなるようなホテルを目指して運営していきたいと思っています」
LANDABOUT TOKYO支配人
濵田光紀さん
1991年兵庫県生まれ。2015年シェアハウス・ホステルを運営する会社でマネージャー職を経験し約2年半勤めた後退職。当時一緒に働いていた仲間と共に創業メンバーとして、宿泊施設の運営・管理を行う(株)ベステイトへ転職。福岡の宿泊施設「モンタン博多」で2年間現場で経験を積み、その後LANDABOUTの支配人として着任。
photo by keishi asayama
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東京ビエンナーレ2020-2021参加アーティスト。
Twitterではグラフィックデザイン、ファッションデザイン
アートプロジェクトの事など発信しています。
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