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枕草子 すさまじきもの(1)

清少納言先生:今日は、すさまじきものです。
舞夢    :では、現代語訳します。

面目を失うもの。
昼間に吠える犬
春の網代
三月四月の紅梅の衣
牛が死んでしまった牛飼
産まれたばかりの子供が死んでしまった産屋
火を起こさない角火鉢や知火炉
博士の家で女子ばかりが生まれてしまうこと
星のめぐりが悪いため、方違えに行っても、もてなしてもらえない所
その日が節分の場合は、いっそう興ざめになります。

清少納言先生:はい、これは解説します。舞夢君の時代とは違うから。
舞夢    :助かります。
清少納言先生:犬は、夜間の番に使うので、昼間あの声で吠えられても面目
       なし。
       網代というのは、川中に杭を打って竹組みをして上流から下
       がって来る魚を取る仕掛だけど、水量のない晩秋から冬が本
       番、春は興ざめ。
       三月四月は、旧暦だと晩春初夏、紅梅の衣は季節外れ。
       牛とか産屋とか火を起こさない話は、当たり前すぎて省略し
       ます。
       博士というのは、文章道でも明経道でも最高の栄誉の地位で
       す。
       学問は男子が携わる決めがあって、女子は後継できないから
       興ざめ。
       方違えの場合は、行った先でもてなしてくれて当たり前。
       それがなされないので、興ざめ、節分の場合はなおさらで
       す。
舞夢    :要するに、季節はずれとか、場違いとか、ふさわしくない
       興ざめ。
清少納言先生:うん、中には、それぞれ事情があるんだからってね、文句を
       言う人もいるけれど、単純に書いただけです。
舞夢    :感情論とか同情は抜きにして、例示したと・・・
清少納言先生:少し書き方はきつかったかもしれない。

清少納言先生は、そのまま消えた。
ただ、途中から気がついた。
「すさまじ」は、「をかし」の対語で、時季外れ、場違い、面目なしを意味する。
先生は、「興ざめ」とも表現していたけれど、「面目を失う」という意味が強いのではないか。
清少納言先生の書き方は、確かに唐突だけれど、他人が言うほど冷酷な人間ではない。

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