新古今(18) 鶯の 鳴けどもいまだ 降る雪に
和歌所にて、関路鶯といふことを
太政天皇(後鳥羽院)
鶯の 鳴けどもいまだ 降る雪に 杉の葉白き 逢坂の山
(巻第一春歌上十八)
鶯が既に鳴いているというのに、いまだに雪が降り続く。
その雪のために、(緑であるべき)杉の葉が白い逢坂の山になっている。
※和歌所
建仁元年(1201)七月に、後鳥羽院御所に再興された、和歌のための部署。
この歌は、建仁二年(1202)二月十日の影供歌御合、題は「関路鶯」。
鶯は二次的に詠まれているので、「関路雪」のほうがふさわしいが、冬の歌として詠まないために、意図的に改題している。
※逢坂の山
近江の国の歌枕。
山城と近江の国境をなす峠。(滋賀県大津市に地名が残る)
東国との境であり、畿内の東端になり、最初に春が来る土地とされていた。
※本歌
梅が枝に 来ゐる鶯 春かけて 鳴けどもいまだ 雪は降りつつ
よみびとしらず(古今和歌集六)