枕草子 第71話七月ばかりいみじう暑ければ(3)
清少納言先生:続きをお願いします。
舞夢 :了解しました。
「朝顔の露が落ちる前に、後朝の文を書かねば」と思い、帰り道も思案しつつ「麻生の下草」などと口ずさみながら、自分の家に帰る途中だったのでしょう。
すると、この女の局の格子が上げられていたので、御簾の端を少し引き上げてみると、まだ寝乱れ姿で、起きて帰っていった別の男君のことにも興味が湧くし、後に残された女君にも心を惹かれます。
しばらく立って見ておりましたら、枕元に朴の骨に紫の神を貼った扇が広げたまま置いてあります。
陸奥紙の懐紙が細く折られて、縹色か紅色か明るめのものが、几帳のそばに散らばっています。
清少納言先生:お疲れ様。
舞夢 :格子を開け放してあったので、別の男君か前の男君に、覗かれたのですね。
清少納言先生:情事の後でしたし、7月という大変暑い時期でね。
舞夢 :後朝の文は、時間が勝負だったと・・・
清少納言先生:早く届けられれば愛情が濃いと、安心するのです。
舞夢 :麻生の下草とは?
清少納言先生:「古今六帖」で「桜麻の麻生の下草露しあれば明かしてゆかむ親は知るとも」からで、「露が下草に降りているので明るくなってから帰りましょう、親に知られても」になります。
舞夢 :それにしても、なかなか意味深な情景ですね。
清少納言先生:男女の仲は、簡単にきれいさっぱりというのは、難しいですね。
女君が無防備過ぎるので、別の男君に覗かれたのではなく、今の男君が残っていたという解釈もあるようですが、7月の本当に暑い時期の情事の後ということなので、別の男君説が大勢のようです。