新古今(10)春日野の 下もえわたる 草の上に
堀川院御時、百首奉りけるに、残りの雪の心を詠み侍りける
権中納言国信
春日野の 下もえわたる 草の上に つれなく見ゆる 春の淡雪
(巻第一春歌上十)
春日野には、一面に芽が生えだしています。
その草の上で、そしらぬ顔をして、春の淡雪が、消えずに残っております。
※堀川院
第七十三代天皇。白河天皇の第二皇子。母は中宮賢子。
※百首歌
堀川百首。長治二、三年(1105,1106)頃詠進。
※下もえわたる
「下萌え」(ひそかに思い焦がれる)から。
人目にはつかないけれど、草の芽が一斉に生え出ていることを、表現する。
それに対する淡雪の 「つれなし(無関心)」とともに、恋歌によく使われる表現を春の自然の歌にしている。