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新古今(38)春の夜の 夢の浮橋 とだえして
守覚法親王、五十首歌よませ侍りけるに
藤原定家朝臣
春の夜の 夢の浮橋 とだえして 嶺にわかるる 横雲の空
(巻第一春三十八)
言葉だけで感じて欲しい歌なので、あえて現代語訳は行いません。
何度も詠み返すと 夢幻、幽玄の世界が広がります。
※建久五年(1198)守覚法親王に詠進した仁和寺宮五十首(御室五十首または守覚法親王五十首と称される)
※浮橋
水面に筏た舟を並べ、その間に板を渡し、橋の代用としたもの。
「夢の浮橋」は、夢の「はかなさ、あやうさ」を浮橋にたとえたもの。
また、源氏物語五十四帖最後の巻が「夢の浮橋」。
この定家の歌に、浮舟の複雑な心理を詠んだとの説もあるが、確定はしがたい。
※本歌
「風吹けば 峰にわかるる 白雲の 絶えてつれなき 君が心か」
壬生忠岑 古今和歌集恋二