【感性思考】からの学びと、思いだせた情熱について
どうも、maimaroというものです。デザインという定義しにくいお仕事をやっています。自分はどんなデザイナーになりたいのか、なぜデザインをする必要があるのか、頭の中でぐるぐる考えてもわからないことだらけだったのでこれから定期的に考えていること、学んだことについて書いて思考をまとめていきたいと思います。同じように頭がぐるぐるしてる人に取って少しでも役に立てるようなことが書けるよう頑張っていきたいと思います。
そんなこんなでデザインという迷路を彷徨っている中、「感性思考」と言う本に出会いました。世の中に必要なデザインと、その考え方をどうビジネスに反映していくべきかについて、とてもわかりやすく書かれている本です。読み終わったあと、ぐるぐるに絡まっていた私の頭が少し解けた気がしました。なんだか、もっと頑張らなきゃと思えました。そう思えた本だからこそ、しっかり理解したいと思い、このレポートを書くことにしました。
【感性思考】という本について
Takramの佐々木康裕氏が書いたデザイン思考についての本です。彼がアメリカのデザインスクールで学んだ*デザイン思考*を日本のビジネスに当てていくための考え方やフレームワークがびっしり詰まっている宝箱のような本です。デザイン思考は、ビジネス視点で物事を考えるのではなく、エンドユーザーを基準に新しいビジネスや商品を生み出していくための思考法です。人間の説明がつかない行動や考え方を丁寧に掘り下げていき、ユーザーが需要を感じるサービスになるまで改善を繰り返していくのがデザイン思考の基本です。
そのデザイン思考、ある意味感性思考をどうやってこれからの日本のビジネスに当てていくのか、なぜデザイン思考がこれからの時代に必要なのかを丁寧に掘り下げていく本なので、デザイナーだけでなくいろんな分野の社会人から学生まで、これからの日本を支えていく人たちに幅広く読んでほしいと思いました。
なぜ読むことにしたのか
私も海外のデザインスクールでデザイン思考とグラフィックデザインを勉強していました。その知識を日本の役に立たせたい!と思い、日本で働くことを決心しました。本来は、海外で学んだデザイン手法を生かし、年々世界での存在感が薄れている日本の企業を元気にしたいという思いから始まったことです。今考えてみれば、若かった頃の私のミッションは今でも変わりません。日本のすごい技術で世界をまた虜にしたい。そう思いながら晴これ6年経っちゃいますが、自分がやりたかったことがまだできていないことに最近気づいでしまいました。それがなぜなのか。。。どうしたら、私のミッションは達成できるのか?
のほほんと毎日デザインをしているだけでは何も変わらない。何も変わっていないのは、適切な行動をとっていないから。行動が撮れないのは気持ちの問題の他、私に足りていない知識や気づきがあるからだ。ようやくそれに気づけた私は、自分が大事だと思っている「人の気持ち」と「デザインの力」について語る本を探し始めました。その時出会えたのが、佐々木康裕氏の【感性思考】この本に惹かれた理由が、「ロジックよりも感性」という見出しでした。私はピュア・ロジカルに考えるのが苦手で、どちらかというと人の感情面で考えてしまいます。それが自分の欠点だと思っていて、中々自分の考え方を人に理解してもらえませんでした。しかしこの見出しを見たときに、「ロジックと感性、どちらも大事であることを認めてくれている!」と思い、自分の苦手を上手く克服しつつ自分の得意を活かす方法が書いてあるかもと、真先に購入してしまいました。
少し前書きが長くなってしまいましたが、この熱い思いを元にこの出会いから得た学びについて語らせてもらおうと思います。
学び
ここから書いていくことは、あくまでも私の解釈であって、結論っぽく言い切るときもあると思いますが決して正しい結論とは言い切れません。なので、少しでもこの本の内容に興味ある人は実際本を読んでほしいと思います。感想文という軽いノリで読んで頂ければと思います。
概要
ここからは本の内容と私の思考がごちゃ混ぜになったヌルヌル話をします。あまり本の概要として参考にはならないと思いますw。
私の解釈でこの本が最も言いたいことは、ロジックやデータだけではこれからのビジネスは成り立たない、ということです。今世界で最も価値のあるサービスや商品は、ここ10〜20年ぐらいで立ち上がったものがほとんどです。その若き強い企業たちは、これまでに存在しなかったサービスや商品を作っています。存在しなかったものは、ヒントを得る競合もいなければ、過去のデータもない。手探りで作っていくしかない中、どうやって売れるものが作れるのか。そこで「デザイン思考」が入ってきます。
「デザイン思考」は顧客(ここからはユーザーと呼びます)目線で考えることが最も重要です。でも人の考えていることは数字や過去のケースで表すことができません。(世界の人間一人一人がユニークなのだから)となると、そのユニークなユーザーが考えていることや求めているものを決めつけるのではなく、しっかり聞き出していくことが重要です。世界中のモノにアクセスができ、似たような商品やサービスが山ほどあるこの世の中では、「需要」より「共感」でユーザーが集まる時代になっていると思います。つまり、ビジネスがユーザーを誘導するのではなく、ユーザーがビジネスの行方を決めることができる時代だからです。だからこそ今はユーザーを理解することが何よりも大事で、稼ぐためだけではなくユーザーの人生をどう豊かにしていくか、ちゃんとユーザーのことを思ってサービスを作り上げていく必要があります。SNSなどで情報が循環しやすいこの世の中で、悪さを起こしたらすぐバレます。汚い目的を元に商品を売り出していくとすぐ批判の声が上がります。「バレやしないから私たちが得する方法で進めよう」と思っている企業は、始める前から終わってます。純粋な思いと目的を持った企業に人は惹かれるため、透明性を保ちつつ常にユーザーのためにサービスや商品をレベルアップさせていく必要があります。
この本にはたくさんの学びが詰まっていますが、一番勉強になったのが以下5つのポイントです:
1. 聞き上手である重要さ
2. 以下にあいてのマインドセットを「感性思考」にできるかどうか
3. アイデアの広げ方は様々
4. アイデアの売り方
5. 適切なアイデアを世に出す
聞き上手である重要さ
ユーザー視点で考えるのはとても難しいと思います。私が思う感性思考で最も大事なのは*聞き上手であること*だと思います。そしてこれがまた難しいんですよ。だって、自分の一日の中で起きる会話を想像してみてください。ほとんどが面倒で、つまらなくて、集中しにくい話だと思います。あくまでも飽き性ですぐ気が散ってしまう私はそうです。でもそれって、ちゃんと話を聞かずに、「あー、これは興味ないな」と、最初から決め付けていることが多いからだと思います。どの話にも面白さや発見は潜んでいるんです。例えば、「今日の晩ご飯どうする?」という、毎日のように行われる会話でも、ちゃんと聞いていればその人の好みが見えてくるし、性格も明らかになってくると思います。「うーん、今日は疲れたからピザ」とか「なんでもいいから決めて」という返事が多ければ、「この人は栄養より手軽さを重視しているな。そうなると一緒に食べていない時でもファーストフードとか食べることが多いだろうな」という仮説にたどり着きます。話をちゃんと聞いていたからこそ、この人がどういう人なのか(疲れやすい、面倒くさがりや)、何が必要なのか(栄養)、どうやって会話すればいいのかが見えてくると思います。あれ、それって面白くない?どんどん人間という複雑なパズルが溶けていくみたいでクセになりそう!と思う人は、デザイン思考に向いていると思います。そして、そう思えると毎日の戯れもない会話が面倒じゃなくなってくると思います。
忠実的なユーザーはどこに潜んでいるかわかりません。探しだすためにも、しっかりユーザーの声を聞いていく必要があります。そして、ただ表面的な話を聞くだけだといけません。ユーザーが教えてくれることの裏を読んであげたり、より深いインサイトを引き出すために質問の解像度も上げていく必要があります。ユーザーが考えてもいなかった、無意識に感じていたことを見つけることができたら、ユーザーヒアリングは成功だと思います。
ユーザーは「SAY(言うこと)」と「DO(行うこと)」が一致しないことがよくあります。このギャップを見つけ出すことができると、より真実に近づくことができます。インタビューだけではなく行動観察も行い、ユーザーのユニークなニーズやクセなどを掘り出して、ストーリー化していくのが重要です。
ユーザーのリサーチを行っている時に頭に入れておくべきことは、人はバイアスにとらわれやすいことです。人はバイアスに囚われやすいからからこそ、SAYとDOが一致しなかったりします。「ニュースで若い人は〇〇が好きって言ってたから、次のCMに使おう」など、自分で調べずにバイアスべースで物事を進めてしまうこともあります。私もよく考えてみたら、本当にいろんなバイアスを持っていることに気づきました。「おそらくそうだろうな」と軽い気持ちで物事を進めてしまうこともあります。でもバイアスは仮説でもなんでもありません、ただの思い込みです。しっかりユーザーに刺さるサービスや商品を作るには、すべてのバイアスを捨ててしっかりユーザーを理解し直すとこから始めるのが正しいことだとこの本に気づかせてもらいました。
以下にあいてのマインドセットを「感性思考」にできるかどうか
これ、本当に大事だな〜と、すごく思いました。私はデザイナーとして、よく作ることに集中してしまって、伝え方や相手がどう受け入れてくれるのかを考えることが二の次になってしまいます。ですが、いくら頑張って作ったところでちゃんとその思いとよさが伝えられなかったら全ての努力は水の泡だとになります。以下に相手(関係者、ユーザー)を「受け入れる」スタンスにできるかどうかがカギになると思います。
相手のマインドを「感性思考」に変えるためには相手をどのモードに入らせるかと、以下に相手が共感できるストーリーが伝えられるかです。モードとは1人の人間にある「形態」とも言い換えることができます。例えば私は職場ではごく普通の20代後半の女性デザイナーですが、その他に娘であったり、姉であったり、誰かのパートナーであったり。それから更に美術館ジャンキー、自転車好き等、様々なモードを持っています。その時話しているシナリオやデザインに合わせて、相手のモードを引き出すようなプレゼンを目指すのが良いでしょう。そのように刺さるプレゼンを作るためには、共感できるストーリーを使います。聞き手が以下にストーリーに入り込めるか、わかりやすく共感できるか。それらを踏まえて、ユーザーストーリーやシナリオ設計を行う必要があるんだなと、大変勉強になりました。
さらに、人はバイアスに囚われていることを前提に話をするのが友好的であると佐々木氏はおっしゃってました。人は無意志にバイアスにかかっており、むしろバイアスなく生きることはとても難しいことなので、もう自分にも周りにもバイアスがかかっている前提で仕事を進めるのが効率的です。ただ、デザインリサーチを行うときに一番最初にやった方がいいだろうなと思ったのが、自分のバイアスをテストするのが良いのではないだろうか。まずは自分のバイアスを仮説という形にして、自ら壊しにいくことで、前に進める気がします。バイアスを壊してしまえば自分に足りない知識など、なぜそのようなバイアスになってしまったのか等リサーチルートが見えてくるからです。こうすることでどんどん正しい方向を向いた仮説を立てることができ、より効果的なデザインが作れるんじゃないかと思いました。
アイデアの広げ方は様々
これは割と口にしてみると当たり前に思えるかもしれないですが、近頃「発散する」や「考える」時間がどんどん減ってきている気がします。その理由はいくつかあると考えています。
1. 単純に時間がない(クライアントワークだと特に)
2. 「アイデア」を出すためだけの時間が少ない。要するに、今のデザインスタイルは作りながら改善することが多いので、アイデアを考えながら作ることが増えているからだと思う
3. チームでデザインしている場合、フレームワークがないと効率よく考えていくのが難しい(閃きベースになってしまう)
とまあ、他にも色々理由はあるかなと思いますが、世の中のペースと求められているワークスタイルを考えると、ユニークなアイデアを考える余裕が少しづつ削られていく一方です。
佐々木氏はダニエル・カーネマンという経済学者の考え方について書いており、そのカーネマン氏は世の中に合理的な人間像[エコノ]と、感性的な人間像[ヒューマン]がいると考えています。本の中でのわかりやすい例で言うと、ポイントがつくから家電販売店でお買い物するのは「エコノ」で、ポイントがつかなくてもお気に入りのお店で買うのが「ヒューマン」です。なぜこれが大事かと言うと、これまでのビジネスはこの「エコノ」に集中したモデルが多かったのですが、今の時代では「ヒューマン」を中心に考えていく必要があるからです。それは最初にお話しした、「需要」より「共感」でユーザーが集まる時代になっているからだと思います。
この「ヒューマン」なニーズに応えるにはどうするべきか?まずは今まで話してきた手法を使ってユーザーのバリューや行動意思についてリサーチしていく必要がります。そのリサーチが終えて、十分にインプットできたらユーザーを意識したアイデアを出していくのが良いでしょう。
「ヒューマン」を意識したアイデアだしでは、「良いアイデア」や「悪いアイデア」にあまり左右されずに、「可能性」を出していくのが良いのかなと思ってました。特にチームでアイデア出しをしている場合は、みんなのモチベーションを保ちつつ、一人一人の個性が活かせるようなアイディエーションが必要だと思います。「ヒューマン」にアプローチしたアイデアの面白さは、顧客の可能性が無限であること。ヒップホップが大好きなおばあちゃんや、野菜を毎日食べ過ぎてしまう幼稚園児など、これまでには考えられなかった顧客セグメントがターゲットになることだってありえます。まだタップされていない顧客セグメントをターゲットにすると比較できる競合が少なくなってしまうので、新しいアイデアや手法が生まれやすくなります。
本の中ではいろんな手法を紹介してくれてますが、私は人を巻き込むアイディエーションが一番好きです。関係者全員がアイデア出しに関わると、その分コミット力も上がり、自然と感性思考モードに入ると思うからです。
アイデアは最終的に少量に絞られる必要があるのですが、まずは存分に思考を広げて、思考を深めて、深めたところでいろんな視点からアイデアを出す、と言うプロセスが一番効率良いと思います。
アイデア出しは楽しいですが、最終的には形に落として価値を検証しないと意味がないのでそこだけ忘れずにデザインしていきたいと思います❤️
アイデアの売り方
私は新鮮なアイデアについてを考えるのはとても好きですが、アイデアを売るのは苦手なほうです。プレゼンはいくら練習しても、クライアントが疑問に思ったことに対してすばやく回答するのが下手だからだと思ってました。でもこの本を読んで分かったのが、そもそものアプローチが間違っていたことに気づきました。
私はロジックが苦手なのに、いつもロジカルなプレゼンを行っていました。それが正しいと思い込んでいたのです。でもエモーショナルなものを作っているからこそ、エモーショナルなプレゼンをする必要があったのです。もちろん、ビジネスにおいてはしっかりロジックを立てておく必要はあるのですが、内容の*伝え方*によって相手の捉え方は変わってきます。感情移入できるような、感性思考的なアプローチでプレゼンを行えば、クライアントも違うスタンスで話を聞いてくれる、ユーザーになった気持ちで話を聞いてくれると言うことです。
そして感性的にプレゼンを受け止めてもらうにはもう一つ方法があります:とりあえず作ってみることです。未完成のものでも良くて、事前にお客さんと確認したものでもなくてもいい。とにかく手を動かすことで、次のステップが見えてくるし、相手も方向性が見やすくなるため巻き込みやすくなるのです。
自分の脳だけでなく聞き手の脳を柔軟にするためには、とにかく否定的な論理モードではなく協力的な感性モードに誘導することが大切なんだと、この本のおかげでよくわかました。
適切なアイデアを世に出す
この本で佐々木氏は「2度アイデアは買われなければいけない」と言う。それは社内の「受け入れ」と社会の「売買」を示しています。
商品はマーケットに出てからが勝負だと思います。たくさんの商品にアクセスできる世の中で、どうやって商品をブランディングしていくか、ビジョンに共感できるファンを見つけ出せるか、愛され続け、利益を産み続ける商品にできるのか。。。マーケットに出る前から予測できることでもありますが、マーケットに出てからの学びをしっかり受け止めて商品に繁栄し続ける必要があります。だからこそ、全てマーケットに出すものに関連する関係者全員が乗り気でないとその商品の慈明は短いものになってしまいます。しっかりと関係者がわかるように商品の存在意義とストーリー、達成したいビジョンを伝えて、共感してもらえたらその先にあるより大きい壁である世界にも同じストーリを伝えていく必要があります。よりマーケットに浸透しやすくなるためにブランディングのほか、フィードバックを受け続け、エコシステムもしっかり対応できるライフサイクルを考えていくべきかと思いました。
フィードバックのサイクル
UXの基本である「フィードバックサイクル」は、どのようなデザインに関しても重要なのではないかと思います。しかしそのフィードバックは単なる評価を得るモノだけではないと考えています。フィードバックをもらうことで、周りの人間がどうその商品を捉えているのか、どの部分に気づくのか、作り手が想像していなかった利用法を提案してくるのか等、フィードバックは自然と商品作りをコラボレーションに変えてくれる傾向があるからだと思います。完璧に商品を作りきらなくても、プロトタイプの時点でいろんな人にフィードバックをもらい、改善して、さらにまたフィードバックをもらいを繰り返していくと、どんどんその商品の解像度を上げることができます。フィードバックを聞くのはときに辛いですが、フィードバックをもらわないといいものはできないと、私は心の底から信じています。
一つのプロダクトとして考えるんじゃなく、エコシステムとして考える
世に出すプロダクトは、一つのタッチポイントでは終わりません。「コップ」をマーケットに出すとしてもまずはコップの形、様々な人の手にフィットするか、熱いもの、冷たいものを入れたらどうなるか等を考えるのが普通だと思います。でもその先も、そのさらに先も考えないとヒット商品はできないだろうと、この本には書かれていました。その出来上がったコップがどのようなパッケージで、どのようなエクスペリエンスで売られるのか、他の食器とどう収納されるのか、どう洗われるのか、いらなくなったらどう捨てれば良いのか。一つのプロダクトだけではなく、一つのエコシステムとして商品を作っていかないとヒットしないし、人の心は打たれないでしょう。
・・・・・
予想以上にベラベラ喋っちゃいましたが、以上、【感性思考】を読んだ私の感想と学びのまとめになります。本当にたくさん学びの詰まった本なので、ぜひ手にとって自分で確かめて欲しいと思います。
これまで書いてきたように気づきはたくさんありましたが、この本を読んで一番大きかった気づきが、私ってデザインのこと全然分かったないな〜っと言うことでした。それは別に悲しい意味ではなく、まだまだたくさん学びが必要であると言うワクワク感を与えてくれたと言うほうが正しいでしょう。私もこれからたくさんインプットして、しっかり感性思考を意識しながらデザインを続けていきたいと思います。
ではまたどこかで。