データ音源の時代にCDという形ある「モノ」を作る理由 -音楽を「手に取る」喜び-
こんばんは。乳がん闘病中のまいです。
大変今更感が強いのですが。買いました。米津玄師さんの『Stray Sheep』。
2020年8月5日発売ですので、約1ヵ月遅れ。
発売前から、買うかどうか迷ってたんやけど、最近ライブ会場以外でCDを買うことはほとんどなくなり。音源あればいいから、レンタルで借りてきたりダウンロードしたりということが主流になってきてたん。
今回もね。最初はTSUTAYAでレンタル始まってから借りればいいやぁと思っとったんですよ。
でも。
最近、米津さんはメディアの露出が増えてきた。読売新聞の対談記事を読み。このアルバムに対する想いに触れ。
Youtubeで各楽曲を抜粋した動画を聴き↓
Youtubeで米津さんが配信したRadioを聴き↓
挙句の果てには、全曲ピアノソロにしちゃって楽譜まで公開しちゃってる動画を見つけ。
この動画、8月14日公開よ!?発売から10日足らずで全曲楽譜作って演奏しちゃったって、すごいなぁ~~。
今はCDという手に取れる形のモノにしなくても、音楽を配信できる時代。
前に劇団に所属しとった時にCDを作ったことがあるんで、モノにすると大変なんはよぅ分かっとります。コストかかるし在庫抱えたら大変やし、デメリットが多い。
データでダウンロードできる時代になったことで、配信側のコストも下がり、アマチュアのミュージシャンも気軽に自分の音楽を発信しやすくなった。
なぜ、この時代に、あえて特典付きのCDを発売したんか。
米津さんが読売新聞の対談の中で話していたこと。
昔、自分が好きなミュージシャンのCDを手に取った時のワクワク感。それを届けたい、と。
発売日が来るのが待ち遠しくて。
CDショップに行き、急いで家に帰って袋を開け、ジャケットを眺め。
歌詞カードを端から端まで眺め。
盤面の印刷を眺め。
CDをセットして1曲ずつ聴いていく時の、あの、ワクワク感。
CDという形になることで、音だけではなく、ジャケットや歌詞カード、盤面のデザイン、さらには今回みたいに特典の付属物でアーティストの世界観をさらに広げることができる。
もちろん、その音楽だけでも十分伝わるものはあるんやけど。
表現の媒体が増えると、こちらに伝わってくるものも、何倍にも膨らむ。
一昨日の夜、えいやっと気持ちを掘り起こして、Amazonでポチっと購入ボタンを押しました。
今日の午前中、いつ届くかなとポストまで3回見に行き。
やっと手に取ったCDを午後中ずっと流しっぱなし。今も聴いてる。
特典のクリアファイルは内側が銀色でめちゃくちゃカッコいい。クリアファイル、よく使うから嬉しい!
久しぶりに、体感しました。
音楽を「手に取る」喜び。
中学生の時。
まだおこづかいが少なくて、CDアルバム1枚買うことは大変な勇気がいった頃。
たまたまラジオかなんかで耳にしたカナダのガールズロックバンドのCDをCDショップに探しに行き、見つけた時の興奮。
買うかどうかめちゃくちゃ迷って、それでもやっぱり欲しくて、買って帰り、
英語の歌詞カードと、訳詞の歌詞カードを突き合わせながら曲を聴いていった。英語の意味なんてその頃はよく分からなかったから。
今の時代、歌詞なんてネットで調べればいくらでも出てくるやん。
訳詞やって親切な人が自分のブログで書いてるのを見つけられるん。
ジャケットの写真だってネットでスクショすればえぇし。
何もCDという形で手にしていなくても、それなりのものは手に入るん。
そういうことではなくて。
アーティストが魂込めて。
こちら側に伝えようとしているモノが、手の中にあるCDから、伝わってくるん。
どんな素材で。どんな色合いで。どのくらいの文字の大きさで。どんなフォントで。どんな絵を添えて。その曲、その音楽、その作品の心を伝えようとしているのか。
それがCDという形に、めいっぱい、詰まっている。
久しぶりに、音楽を手に取る喜びで、ワクワクしている。
コロナ禍の今。
「不要不急」のモノが消えてしまったあの時。
多くの人が生きていくために必要なものって何だろうって、考えた。
音楽は、生きていくために、必要ですか?
米津さんが、対談で、「音楽はなんて無力なんだろう」ということを話していた。このコロナ禍を受けて、ツアーを中止し、ライブはできず、その分音楽の創作に時間を注いだらしい。
確かに、音楽で人の命を救うことはできないかもしれない。
災害や戦争などで命の危機に瀕している時、音楽は無力なのかもしれない。
乳がんの闘病で一番精神的に辛かった卵子凍結保存のために産婦人科へ通っていた時期。
私は音楽が聴けなかった。
その日一日、とにかく時間が過ぎていくことだけを願って。何をする気にもならなかった。
あれほど毎日音楽を聴いていたのに。
時間があるならもっと踊りたいと思っていたのに。
好きなアーティストの曲を聴くことも、それで踊ることもせず、ただじっと、生きる最低限の力を蓄えるかのように、ただじっとしていた。
こういう時、音楽の力は無力なのかもしれない。
それでも。
少しずつ気持ちが前向きになって、前を向いて歩いていこうと、心の中から生きる力を振り絞ろうとした時。
音楽が必要だった。
心が生きる力を取り戻そうとする時。
音楽が後押しをしてくれた。
踊ることによって、気持ちも身体も癒されていった。
音楽は、生きる為に必要最低限のものでは、ないと思う。
それでも、人が、前向きに、その人なりの人生を生きていく時に、必ず必要とされるものだと思う。
心に力を与えてくれるもの。
自信を与えてくれるもの。
支えてくれるもの。
寄り添ってくれるもの。
米津さんは、自分の音楽が誰かを傷つけることがないだろうか、ということをいつも気にしている。
売れたからと、傲慢になることがないように自分に戒めている。
その優しさが、聴く人の心に、届く。
今回のCD発売も、今、彼に出来る唯一のことだったのだろう。
いろんな形で発信を始めたことも。きっとどこかで誰かの支えになっている。
こうして、「手に取れる」形になったものは、手にした時の感動と共に、この先も私の中に残る。
ウォークマンの中の数ある楽曲のうちの一つではなく。
確かに私の心に感動を残した一つのものとして。
乳がんと生きてく私の人生に、寄り添ってくれる。力を与えてくれる。
時代にこびることなく。
自分の信じる道をいくクリエイター。
これが、モノを作る、ということなんだと。