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二つ目の教え、「私を苦しめる人も師である」

私たちの幸福度に一番影響しているのは、間違いなく人間関係だ。今までの人生を振り返ってみてほしい、容易に納得がいくと思う。

学生時代に楽しかった時間を思い出すと仲間の笑顔が見えたり、思い出す度に心臓がぎゅーっとなる辛い記憶には人間関係のもつれが一番多いのではないだろうか。

開業してから眠れない夜を過ごした原因はコロナでオフィスを閉めたせいでも、売り上げが下がったせいでもない。毎回必ず人間関係、特に従業員の問題だった。

うちの夫はドクターとして腕もいいし、心が優しいので先生としては人気がある。ただ、お勉強ができる人の特徴なのか、必要以上に物事を深く考えすぎてしまう。いろいろな可能性を考え失敗を避けるためには経営者として必要な要素だと思うが、スタッフの問題まで深く勘ぐりすぎてストレスを抱えるのだ。

スタッフに猜疑心を持っている限り、彼の心は晴れず、患者さんの治療に100%専念することはできない。そこで私が入ってからは私が人事の仕事を引き受けた。

病院というのは基本女性ばかり。うちは小さなオフィスだが、女性が集まればホルモンが暴走する日がある。それは女性の私も理解できる。

私の存在に慣れてくると、今度は例の賢いスタッフBが私に対して舐めた発言や無礼な態度をするようになった。あまりに頭がキレるし夫からも一目置かれているスタッフなので、最初は私に対する無礼な態度には目をつぶっていた。問題は、彼女の態度が金の卵ちゃんにまで伝染し始めていたことだった。

いや、金の卵ちゃんの仕事ぶりや私に対しての態度は全く変わっていないのだが、上司である私の指示をBに確認し始めたのだ。これはマズイ。

私のオーナーとしての威厳を取り戻さなくてはいけない。

もともと私も気が強いタイプなので、Bの無礼な言動が3回続いた時にもう我慢できなかった。プッツーンと何かが切れた音がした。

私達夫婦は子供たちと過ごす家族の時間まで犠牲にして、週末も使って、彼女たちが働きやすいように努力している。私なんてお給料はもらわず、人材不足でも一生懸命働いくれている彼女達に毎月ボーナスを払っている。なかなか妊娠できないストレスかな、資格を取る勉強をしているから寝てないのかな、とか気を使ってイライラしてても我慢してたのだ。

ふざけんじゃねー。

翌日、私はみんなに挨拶もろくにせず、見るからに不機嫌で、怒っているエネルギーを隠さず一日を過ごした。金の卵ちゃんには「私の指示はオーナーの指示であり、現場のいろいろな角度から吟味してドクターと判断している。他の人に確認する必要はない。」と伝えた。

不機嫌でいること、怒っていること、態度の悪いスタッフをどう懲らしめてやろうかと叱り文句を考えているだけですごく疲れた。家でも夫に当たり散らし、子供達もやたら怒られる。

なんだか疲れるし、違う気がする。

そんな時、心に響くのは仏教の教えだったりする。仏教が教えてくれる世の中の真理に基づいて物事を見てみると、私は脳が勝手に作り出したストーリーに怒っていることに気がついた。自分のネガティブな感情が爆発して、事実からかけ離れたストーリーを作っているのかもしれないのに。

目の前にいる私を苦しめる存在や嫌な出来事も、私に何かを教えにきてくれる師である。

そう考えると、スタッフBに対する私の対応が全然変わるのだ。まず、「上司の私をバカにしている」と低い次元で怒っている自分のエゴが見えた。彼女の低い波動に飲み込まれて、怒り狂った自分はなんて小さなリーダーかと反省した。

私にはリーダーシップがない事実を彼女は教えてくれた。彼女の無礼な態度のおかげで良いリーダーとはなんなのかといっぱい悩み考えた。仏教の助けもあり、反応しないことを学んだ。そして、彼女達には小さなことから感謝を伝え、常に会社として正しい判断をしていることを見せた。私の中でリーダーとしての指針が確立された。

スタッフBは、私に「リーダーシップを学びなさい」と機会を与えてくれた人生の師なのだ。

実際に過去夫を苦しめた存在も、夫がリーダーとして未熟だった部分を教えてくれた。そして夫が学び終わると彼らは自ら私達の人生から消えてくれた。人に優しすぎる夫はスタッフに裏切られることが私より多い。まだ完全に学び切れていないのだろう。。。

この考え方を身につけると、どんな大きな人生の試練がやってきても「学びのチャンス」と受け入れる。「ありがたい」とさえ感じられたら、世の中にこわいもの無し。

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