山本文緒 『無人島のふたり』
2022年9月に出版された、山本文緒さん最後の随筆。
山本さんのことは直木賞受賞作の『プラナリア』で知った。当時の私は、山本さんの描く甘えてウジウジした主人公のことが好きになれなくて、山本さんのことを軽い作家だとすら思っていた。
でも、甘えてウジウジした人物像の描写は実はとてもリアルだったのだと、今なら思う。プラナリアを読んでいた時期、私は江國香織さんの作品にハマっていたけれど、江國さんが東京の上流社会を詩的に描き出していたとしたら、山本さんは、現代日本の一般の(どちらかと言