So I don't lose my mind 【群青日和 #44】
【試合結果】
5/24(金) 広島東洋カープ
●2-5
[勝]島内
[敗]伊勢
[S]栗林
◇ ◇ ◇
8回表で同点に追い付かれた後、の継投はなかなか難しい。
クローザーを出す訳にもいかないし、かと言って連投が嵩んでいる勝ちパターンリリーフも難しい、となる。
さて誰を出してくるかね、と控え投手一覧を眺めている間にテレビから流れてきたのはZombie Nation、つまりそれは聞き慣れた山﨑康晃の登場曲。
「同点、カープ戦のヤスアキならいける!」
「ヤスアキならワンチャンあるって思うよね、正直」
無邪気なカープファンの呟きがSNSの川に浮かんでは流れ、浮かんでは流れ。
確かに昨年、対広島の成績は良くなかった。
直近のハマスタ広島戦、つまり開幕カードでの登板機会も無かった。
対戦してきた相性を考慮されたんだろうなと察したし、案の定森原の名前がコールされた後、どこからかあからさまに大きな溜息も聞こえてきたのも覚えている。
腹が立った。
流れてきた悪気のない言葉も、あの日聞こえた大きな溜息も、諸々ひっくるめて今の彼を取り巻くもの、全てに。
2024年の山﨑康晃は、4月25日の『あの』阪神戦以来失点していない。
その他の巨人、ヤクルト、中日、広島の4球団に対しては計9イニング登板して無失点を続けている。
リリーフピッチャーのしんどい所は、230回の成功よりもはるかに少ない失敗の記憶をより濃く残されてしまうこと。
投げるイニングが短いので、たった一度の失敗でイメージ以上に数字の見栄えが悪くなるのは仕方のないことなのだけれど。
オープン戦から開幕してすぐはチェンジアップやカットボールなども投げていたものの、いつの間にか徐々に元来の姿、ストレートとツーシームの2球種のみを投げ分けるスタイルに戻っていた。
このスタイルで抑え続けているのであれば、それがヤスアキにとっての正解なんだろう。
それは、見ている側が決めることじゃない。
色濃く残されたイメージを振り払っていくには、一球一球で分からせていくしかない。野球で起きたことは、野球でしかケリをつけられないから。
なあ、お前なら打てるって言ってる奴がいるよ。
打たせないよな。
だって見てるだけの私ですらこんなに悔しいんだもの。
クローザー剥奪、守護神争い、見出しにすれば映えそうな無責任な言葉と、その周りで茶化したり騒いだりする人達。
選手はそれに対して言い返す術を持たない。
代わりに、今まさにマウンドで投げている球がヤスアキの意思だ。
執念深くゾーンの際を突くストレートと、打者の膝付近から鋭く落ちるツーシーム。
最後の相手になった秋山に対して、静かにギアが上がったように見えた。
初球、ストレート149km/m。空振り。
最近のヤスアキはストレートが遅くなった、と言っている人がいるが実際はそうじゃない。おそらくここぞで抑える時のために、わざと球速に変化をつけている。
アウトカウントが進むまでは制球重視で145km/h前後、ランナーが出たりアウトカウントが進むと、149km/h前後と平均球速が上がる。
ツーシームとストレートでファウルを打たせてカウント2-2。
最後は初球とほぼ同じコースにストレートを押し込んで、センターフライ。
大きなケガ一つすることなく投げ抜いて、10年目のシーズン。
そうやってマウンド上からリベンジしていこう。
だって私が見てきたヤスアキは、こんなもんじゃないからね。