義母との同居を解消したい!⑦
【偽りの冷蔵庫】
大型冷蔵庫である。
夏休みに愛しの我が家へ帰ると、実家で使用していた古い大きな冷蔵庫が、和室の一角に運び込まれていた。あれほど持ってきていないと電話で確認していたアレが、それはもう異質な存在感を放っている。
新築で明るい我が家との落差が酷い。
冷蔵庫だけタイムスリップしてきたかのようだ。
義母の世代特有のものなのか、何でも冷凍保存して、常に満タンの実家の冷蔵庫は、引っ越し前から絶対に置いてくるようにお願いしていた。
もともと新居のキッチンに合うサイズの新しい冷蔵庫を購入する予定だったことと、実家で使っていたものが、かなり大きく、古いものだったため、余分な電気代がかかることや、引っ越しの際の運び込み、または処分する際に、壁や床などに余計な傷がついてしまうことも懸念していた。
そして、引っ越しのタイミングで冷蔵庫の使っていない物を処分してもらうため、新しい冷蔵庫を購入するまでの間は、私が一人暮らしの際に使用していた単身者用の冷蔵庫を使ってもらうよう、あらかじめ運び込んでもらっていたのだ。
もちろん引っ越し前からその旨は充分に説明済みである。
もし約束を守れないようなら、一緒に住むことはできないとも言っていた。
納得していない様子であったが、口では「わかった」という義母の言葉を信じ、それでも信用できないという夫が何度も電話で確認して、「冷蔵庫はもってきていない」と話していた言葉が、嘘だったということが判明した。
義母がどうしても捨てることができなかったその大型冷蔵庫は、和室に置かれ、新しい冷蔵庫を待っているキッチンのスペースには単身者用の冷蔵庫がちょこんと置かれていたのだった。
一応聞く。なぜ嘘をついて持ってきたのか?
「こんな小さな冷凍庫では生活していけない」
それが彼女の答えだ。
冷蔵庫よりも冷凍庫のサイズ感がどうしても受け入れられなかったのである。結局のところ、これまで冷凍してきた保存食に別れを告げることが出来ず、いつ食べるのかわからぬ食材とともに、大きな冷蔵庫を持ってきたそうだ。
そして今後も変わらず保存食を作っては冷凍し、食材を蓄え続けることが、彼女の言うところの「生活」らしい。
なら先に言えよ。まじで。
私たちは引っ越しに立ち会えないほど仕事が忙しい状況で、家具や家電は引っ越してから決めることを伝えていた。
だからせめて先に単身者用の冷蔵庫ではあるが、部屋に運んで使ってもらい、私たちが帰った時に改めてキッチンに合う大型冷蔵庫を選ぶつもりだった。
その話をしたときに、言えよ!!!!!!!
そもそもさ、スーパーが徒歩2分の好立地に引っ越してきて、そんな大きな冷凍庫要る?
ファミリーならわかるけど、当分一人暮らしなんだからさ、冷凍保存しないで買ってきてよ!
魚とか野菜とか、旬の時期にいっぱい買って冷凍して、いつでも食べれるようにしておくって言ってるけど、結局食べてない物でその冷凍庫いっぱいじゃん!
夫が確認したときに嘘をついていたことも、
「私の生活ができない」ことを理由に、決して謝られることはなかった。
何でも「仕方ないじゃない」で済ませようとすることと、全く悪びれない姿に、私は飽きることなく何度も絶望を感じることができたのだった。
つづく