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一日一書評#4「パパは今日、運動会/山本久幸著」(2015)
本を買う前に内容をよく確認しないと、思いもよらない勘違いが起こる。ノンフィクションかと思えばフィクションだったといった具合に。
本書を買う際にもそれは起こってしまった。「パパは今日、運動会」は、とある文房具会社が運動会を開き、普段とは違う状況下で社員たちが奮闘する、というのが大まかなあらすじだが、それを実際にあった話だと思い買ってしまった。
多少がっかりしながら(確認しなかった自分が100%悪いのだが)読み進めてみると、その落胆は吹き飛ばされた。個性豊かな面々が織りなす人間模様は、読んでいて飽きない。
巻頭にまとめられている、「主な登場人物」は19人。そのうち数人が語り手となり、自らの目で見た他の社員の様子などを描写していく。会社には実に様々な人材がいる。運動会実行委員の岸谷、社内の嫌われ者千葉課長、年齢も性別もバラバラだけど、同じ苗字という共通点で盛り上がるワタナベ一族・・・すべて触れていくとキリがないほど個性的だ。登場人物の多さは途中から気にならなくなるし、応援したくなる人物も現れるだろう。
人は皆、心のどこかに様々な事情を抱えながら生きている。それが明るみになることは普通の生活では無いだろうが、運動会という非日常では、時としてむき出しになる。それが他の者にとっては新鮮だったり面白かったりするのだ。
この運動会に乗り気でない者もいれば、やる気に満ち溢れている者もいる。乗り気でないからといって、ボイコットせず、何だかんだで競技に挑む。そこがたまらない。
この運動会で得た繋がりや高揚感は、一時的なものかもしれない。運動会を通じて仲良くなった人とは、今後仕事で接していくうえで仲違いをするかもしれない。だからといって、運動会を開いたことは決して無駄ではないと思う。この運動会が終わっても、共に走った同僚や先輩とは毎日のように顔を合わせるだろう。この物語は、続いていくのだ。
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