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一日一書評#30「昨日、今日、明日/曽我部恵一著」(2009)
数年前、島根の音楽イベントにボランティアスタッフとして参加したことがある。駐車場整理の合間にライブを見て、楽しい思い出を作った。物販コーナーでは、出演者自ら接客を行い、お客さんと交流をしていた。物販コーナーに立っていたミュージシャンの一人に、曽我部恵一さんがいた。休憩時間、私は曽我部さんの姿を確認して、列に並び、CDを購入した。ジャケットに書いてもらったサインの写真は、私のLINEのアイコンになっている。
曽我部恵一さんは、1992年にサニーデイ・サービスを結成し、1994年にデビュー。一度解散するも、2008年に再結成し、現在も精力的に活動を続けている。本作は、1999年に刊行された単行本に加筆したものだ。単行本発売当時、曽我部さんは28歳だった。
私は曽我部さんの歌はよく聴いているが、文章は読んだことはなかった。本を出していたことさえ知らなかった。大型書店にも売られていなかった本作と古本市で出会えたのは、奇跡と言っても過言ではないだろう。
本作は、雑誌での連載や、ライナーノーツなどをまとめたもので、曽我部さんのあらゆる形態の文章が味わえる。それは日記だったり旅行記だったり、音楽評だったりする。達観した中にも若さのある文章は、何気ない日々を輝かせている。この本を通じて、曽我部さんのキラキラした日常が、体内にスッと入ってくるような、詩的で優しい文章だ。
この本を読んで印象的なのは、「~だったよ」「~なんだ」のように、こちらに語り掛けるような語尾だ。文法的には正しくないのかもしれないが、それがまた良いアクセントになっている。20年前の作品だが、現在の曽我部さんもこの語尾で文章を書いていて欲しいと思うのは勝手だろうか。
もし、私が次に曽我部さんに会う機会があれば、島根で買ったCDを聴いたことと、この本を読んだことの2つを伝えたい。どんな風に話をするか、そんなこと考えると楽しくなるんだ。
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