
一日一書評#2「謎の独立国家ソマリランド そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア/高野秀行著」(2017)
我々はこの世界のことをどれだけ知っているだろうか。この地球で起きていることの何%を知っているだろうか。
ノンフィクション作家の高野秀行さんのモットーは「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」だ。私はこれまで高野さんの著書を何冊か読んできたが、ここまで興味の惹かれるまま体当たりで行動出来る人は他にいないだろうと思う。
今回高野さんが取材に向かったのは、アフリカ東北部にあるソマリランド共和国だ。無政府状態が続くソマリア連邦共和国内にあるソマリランドは、全貌がはっきりしていない。参考文献も極端に少なく、あったとしても複雑だ。そんな未知の国の実態を、自分の目で確かめるべく、高野さんはソマリアへ乗り込むのであった。
郷に入っては郷に従えという言葉があるが、高野さんは多くの辺境地帯を旅しているだけあって、順応性が半端ではない。ソマリアのことを知るには、ソマリ人と心を通わせなければならない。そのために高野さんが取った行動が、「カート宴会」だ。カートは覚醒作用のある植物で、アフガニスタンから南アフリカまでの広い地域で栽培されている。カートを食べ、心を大きくし、ソマリ人と楽しい時間を過ごすという普通の人なら躊躇しそうな行動も、高野さんは平気でやってのける。
高野さんは実際に現地に赴いて、ソマリランドの実態を知ることになる。ソマリ人の性格、ソマリアの歴史、現状・・・未知の国について知る感覚は、他では味わえない読書体験となるだろう。
ある時は危険な場所に行き、リスクの高い行動に出て、またある時は些細なハプニングに巻き込まれる。それらの出来事を、真剣に、そしてユーモアを交えて綴っていく。500ページを超える骨太のノンフィクションだが、途中で飽きることなく読み進めることが出来る。
ソマリアの歴史を解説するパートは、地名や専門用語が多く、なかなか難しいかもしれないが、是非読んで、少しでもソマリアについて知って欲しい。
いいなと思ったら応援しよう!
