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一日一書評#6「女子が読む官能小説/いしいのりえ著」(2014)

書評の書評なんて聞いたこと無いが、面白かったので書くことにする。取り上げる本は「女子が読む官能小説」。著者のいしいのりえさんはイラストレーター兼官能小説ライターである。官能小説の表紙を描く仕事の依頼をきっかけに、官能小説の世界にどっぷりハマり、月に十作品近くの官能小説を読んできた。

本作では60作品の官能小説を、次のジャンルに分けて紹介している。生々しい恋愛を描いた「ラブ」、女性にスポットを当てた「女」、定番ジャンルの「人妻」と「SM」、そして官能小説とは言い切れないが、官能的な表現を用いた恋愛小説を取り上げた「ちょいエロ」の5つだ。

ちなみに私は、本格的な官能小説の類は読んだことがない。ただ、第5章の「ちょいエロ」に登場した、窪美澄の「ふがいない僕は空を見た」は、読んだことがある。物語序盤から、性行為の場面がこれでもかと描かれており、それが強烈に印象に残っていた。

本作は、個人的に未知の世界だった官能小説が一体どういったものなのか、根底から教えてくれた作品だ。本作で描かれているのは、官能小説の魅力や楽しみ方だ。官能小説なのだから、最終的にはエロにたどり着くのは間違いない。しかし、そこに至るまでの恋愛事情や、人間模様が時に複雑に絡み合い、濃厚な描写を演出している。その点も、本作を読まないと知らなかったことだ。

意外だったのは、官能小説は、男女の恋愛の機微も描いているということ。エロい場面が立て続けに起こって終了、みたいな作品ばかり想像していたが、それは時として大きな間違いであることを知った。

この本で知れる官能小説の世界は、氷山の一角でしかない。数年前の本なので、現在では業界の流れやブームも変わり、新たな作品も出ているだろう。官能小説は奥が深く、ただの興奮のための潤滑油ではない。そんな官能小説の世界に、いしいさんと同じくどっぷりとハマってしまうのは、次にこの本を読んだアナタかもしれない。


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