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一日一書評#3「ギリギリデイズ/松尾スズキ著」(2005)
文章の書き方に制約なんて無い。そんな感想を抱けるエッセイが好きだ。松尾スズキさんの著書「ギリギリデイズ」は、とにかく自由な文体で、日々の出来事を書き記している。
劇団「大人計画」のホームページでの連載をまとめた本作は、松尾さんの日記である。全編通して堅苦しい文章は登場せず、その日起きたことを思い付くままに書いていく。
本書を読んで驚くべきは、松尾さんのインプットとアウトプットの量だ。脚本執筆や連載を抱えながらも、毎日のように観劇や映画鑑賞をしている。それらを簡単なことのようにさらっと書いてしまうところに、松尾さんの凄さが現れている。
日記という体裁を取りながらも、毎日更新されていなかったり、文章量に極端なムラがあったりする。しかし、それも他の本では味わえない重要なポイントだと私は思う。
この本で学べることは、面白い文章を書くためには縛られてはいけないということだ。文筆家とはまた違う立場だからこそ書ける、不真面目でいい加減な文章(でも中身はちゃんとした仕事について書いていたりする)には、最初は戸惑うかもしれない。しかし、次第にその滅茶苦茶加減を求めてしまうだろう。その自由な文章に秘められたるは遊び心か、それとも単なる悪ふざけか、それは本人のみが知るところである。
支離滅裂な日々に混じって、時に真面目な話をするが、それも全体の1割以下だ。読んでいる最中はとにかく楽しく、読み終わる頃には何も残らない。教養も知識も身に付かない。そんな本は嫌いだろうか?私は大好きだ。
巻末には、おまけとして「実録・松尾スズキ対河合克夫」が収録されている。漫画家の河合克夫さんのホームページ上に現れた、松尾スズキを名乗る人物とのやり取りをまとめたものだ。あらぬ方向に突き進む喧嘩の衝撃的な結末は、是非読んで見届けて欲しい。
本書を読むと、もっと松尾スズキのことを知りたくなる。「結局何してる人なの?」と聞かれると返答に困るが、これだけでは物足りないのも事実だ。
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