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一日一書評#28「ゴーゴー・インド/蔵前仁一著」(1986)

「ゴーゴー・インド」は、著者の蔵前仁一さんのデビュー作となる旅行記で、その名の通りインド旅行の模様が綴られている。本作では、蔵前さんが描いたイラストや写真を交えて、インドを様々な側面から紹介している。

ある時蔵前さんは、インド好きの友人の話を聞く。友人曰く、インドの何が良いとははっきり言えないけど、行ってみれば良さがわかるとのこと。物乞いや泥棒が多く、下手すれば病気にもなるし、死ぬほど熱くて汚い。そんな国でも、また行ってみたくなるそうだ。それを聞いた蔵前さんは、インドへ行くことにした。10日間の旅行でしたことといえば、事前に聞いていた汚さや泥棒の存在を、自分の目で再確認したくらいだった。

帰国してから、蔵前さんは心に異変を感じた。何もかもが変に感じて、違和感や居心地の悪さでつらくて仕方なくなった。友人に症状を話すと「インド病」だと伝えられる。インドが恋しくなるインド病を治すには、またインドへ行くしか方法はないそうだ。決心した蔵前さんは、仕事を辞め、アパートを引き払い、集めたお金で再びインドへと旅立つのであった。

起きたことを時系列順に書いているわけではないのが、本作の大きな特徴だ。「ルピー」「酒」「カースト制度」など、インドを語るうえで欠かせないものを、項目ごとに分けて書かれている。それぞれの出来事を切り離して読むことが出来るが、時々前に出てきた項目と繋がることがある。

30年以上前に出版された本作で描かれたインドは、もしかしたら現在とは大きく違っている部分もあるかもしれない。しかし、本作を読むことで、日本にいながら30年前のインドに旅立つことが出来るのだ。私の中で、旅行記を残すことの意義について、大いに考えさせられた一冊となっている。

本作を読んで、さらに詳しくインドについて知りたくなったという人もいるはずだ。実際にインドに行ってみるのも良いが、リニューアル版の「新ゴーゴー・インド」を読んでみるのも良いだろう。


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